text by Nobunosuke Saito 斎藤延之助 ある一流日本人ジャズマンに「寄せ集めの名人」と評され、念願とする「より多くの聴衆とのコミュニケーション」を批判された「リターン・トゥ・フォーエヴァー」のリーダー、チック・コリアは去る一月来日し、念願通り各地の公演でつめかけた聴衆と充分にコミュニケートして離日したが、以下はその大成功にも決して自己を見失うことなく素朴さと夢を保ち続けた彼、チック・コリアに関するリポートである。 前述のようにチック・コリアが念願する「より多くの聴衆とのコミュニケーション」は単に音楽上の希求ではなかった。彼を駆りたてるもの、それは彼が信奉する応用哲学(アプライド・フィロソフィー)、サイエントロジーなのである。実際、二年程前に波がサイエントロジーの発唱者、ロン・ハバード氏と知り合ってからマイルス・デビスとの共演時代、そしてサークルでの活動の時期における深