清野 由美 ジャーナリスト 1960年生まれ。82年東京女子大学卒業後、草思社編集部勤務、英国留学を経て、トレンド情報誌創刊に参加。「世界を股にかけた地を這う取材」の経験を積み、91年にフリーランスに転じる。2017年、慶應義塾大学SDM研究科修士課程修了。英ケンブリッジ大学客員研究員。 この著者の記事を見る
アマゾン・ドットコムのCEO(最高経営責任者)、ジェフ・ベゾスはクリスマス商戦を目前にして、自動操縦のミニヘリコプター(ドローン)で空中から商品を配達する「プライム・エアー」という構想をテレビ番組の中で公開した。もちろん法的規制を考えただけでも実用化されることは当分ありそうにないが、アマゾンが公開した動画はあっという間に1300万回も再生された。 一見破天荒なアイデアをブルドーザーのようなパワーで最後には実現してしまうことで知られているベゾスのこと、そのうち本当に玄関にアマゾンの配達ドローンが飛んでくるようになるのかもしれない。ジェフ・ベゾスはスティーブ・ジョブズ亡き後、その後継者と目され、動向が常に注目を集めている。ジェフ・ベゾスとはいったいどういう人物なのか? 正真正銘、顧客第一で長期的 アマゾン・ドットコムはいろいろな意味で型破り、かつ謎が多い企業だ。書籍、おもちゃ、カメラ、電気洗濯
「印刷業界」というと、大日本印刷や凸版印刷といった大手、もしくは街場の小さな印刷会社のいずれかを想像される方が多いだろう。どちらも昔からある「オールドエコノミー」の代表例で、市場規模が徐々に縮小している業界でもある。そんな印刷業界で今、注目されているベンチャー企業がラクスルだ。 自らは印刷設備を持たず、インターネット経由で顧客から名刺やチラシなどの印刷を受注し、連携した中小の印刷会社に印刷を依頼するモデルを確立。中小の印刷会社の設備の稼働率は常に低く、非効率なところに目を付け、工場の空き時間を有効活用しようという試みだ。提携する印刷会社は11月時点で1600社にまで増えた。 今年の春以降は、新聞の折込チラシやポスティングを低価格で提供するサービスも開始。詳しくは後述するが、5~10万円程度で、指定したエリアに5000枚の折込チラシを配れるという低価格を実現。これだけ安ければ、個人経営の店舗
インターネット経由で全国に散らばる個人に仕事を発注できる「クラウドソーシング」。サービスや会社のロゴ制作、ウェブサイトの構築、スマートフォン向けアプリ開発、データ入力など、発注できる仕事は多岐に渡る。このクラウドソーシング業界は今後、急成長が見込まれる一方で、今夏、不幸な出来事に見舞われた。 詳細はCNET Japanの記事「クラウドソーシング業界を揺るがした“大炎上”の一部始終」で書かれているが、クラウドソーシングサービスを提供するランサーズとクラウドワークスについての比較記事を発端に、業界内外で様々な憶測が飛び交い、両社ともに本業とは関係ない対応に追われてしまった“珍事件”だ。 当事者となったクラウドワークスの吉田浩一郎社長、ランサーズの秋好陽介社長が、炎上事件の詳細、およびクラウドソーシング業界の未来について語り合った。 (聞き手は原 隆) この8月、クラウドソーシング業界は思わぬ炎
巷間、好調なインターネット企業と問われて真っ先に挙がるのは、グリーやディー・エヌ・エー(DeNA)といったソーシャルゲーム関連の企業だろう。両者を足しあわせた時価総額は約7000億円(10月5日時点)。いわゆる「コンプガチャ問題」によって一時の勢いは削がれたものの、依然として多くのネット企業がこの分野に参入している事実を鑑みても、ソーシャルゲームは現在の国内ネット業界において、花形産業であるのは間違いない。9月には、NTTドコモもこの分野に進出を検討していることが明らかになった。 華やかなりしソーシャルゲームの世界。ただ、言わずもがなだが、ソーシャルゲームだけがネット業界のすべてではない。目立たずとも、成熟市場に情報技術(IT)を持ち込み、新たな商機を発掘しているベンチャー企業は実はあちこちに存在する。今日はそんな実例を1つ、紹介したい。 弁当宅配にITを持ち込む その会社の名を、スターフ
激務の割には低賃金。過大なノルマと軍隊的社風に支配され、離職率は常に高止まり――。劣悪な労働環境の企業が、ネット上で「ブラック企業」と呼ばれ始めたのは、10数年前からだという。匿名掲示板の隠語の1つとして生まれた言葉はその後、若年層に急速に浸透していった。厳しい社員教育や猛烈営業をモットーとするスパルタ系企業、さらには若者の目に「時代遅れ」に映る古い体質の企業までもが、今では「ブラック」呼ばわりされている。 企業が「ブラック」と呼ばれないためには、採用や教育をどう変えるべきなのか。日経ビジネス4月15日号特集「それをやったら『ブラック企業』~今どきの若手の鍛え方~」では、「ブラック」と呼ばれないための、企業の新人教育、採用方法などについて紹介している。 日経ビジネスオンラインでは、同特集との連動連載をスタート。初回は、ここ数年で突如として「ブラック企業」と言われ始めたファーストリテイリング
「ジャパン」という文字を見ると、反射的に身構えてしまう。 たぶん、10年ぐらい前からだ。 英語の文脈の中に「JAPAN」という英単語が含まれているケースでは、違和感は生じない。でも、日本文の中に「ジャパン」という英単語が混入している場合は、どうしても「あえて言った感じ」が残る。 「日本」の英語名称である「JAPAN」は、多くの場合、アルファベットでなく「ジャパン」とカタカナで表記されている。ということは、「ジャパン」は、国際社会に向けて発信している体を装いながら、その実、あくまでも日本語話者に向けて語りかけられているわけだ。 おそらく、「ジャパン」のうさんくささは、「《われわれは海外に向けて情報発信していますよ》ということを国内向けに発信している」という、その錯綜した構造から生まれているものだ。 別の言い方をするなら、「ジャパン」が体現しているのは、「日本」という国の「状況」や「実態」では
このコラムについて 楽しいシゴトは、自分で作る――。本連載は、これからの日本を背負う、20~30代に向けたエールです。どこを向いても元気のない状況の中、次代を担う若い世代の仕事に対する意欲の低さを危惧する声が、しばしば指摘されています。でも、本当にそうでしょうか。つぶさに目を凝らせば、意識の高い人は、あちこちで活躍しています。 本連載の主役は、そんな志を持つ1人のベンチャー経営者です。ジェットコースターのような彼の体験を追いながら、活力ある若手経営者の奮闘ぶりをご覧ください。自分の夢を内に秘めている人、何か新しいことを始めたくて、ウズウズしている人には、何かが響くはずです。 記事一覧 南壮一郎(みなみ・そういちろう) ビズリーチ代表取締役 株式会社ビズリーチを創業、2009年4月、管理職グローバル人材に特化した会員制転職サイト「ビズリーチ」を開設。2500社がビズリーチに登録し、ダイレクト
フィル:こんにちは、フィル・リービンです。少し間が空いてしまいましたが、2013年もどうぞ、よろしくお願いします。 今回は、投資家についての相談ですね。いやあ、いい質問ですね。スタートアップ企業にとって、資金の出し手である投資家はきっても切れない関係です。ただ、その付き合い方について悩んでいる起業家は本当に多いと思います。果たして、どんな投資家が起業家にとってよい投資家なのでしょうか?今回はその付き合い方について僕の考えをお話ししたいと思います。 最初に、答えから言ってしまいましょう。スタートアップの場合、評価額の高い投資家が最善かというと、決してそうではありません。じゃあ、どんな投資家がよいのか?これについて説明するためには、投資家がどうやって企業の価値を評価しているか、まず仕組みをお話ししましょう。 10億ドルの「評価額」の意味 2012年の5月、僕がCEOを務めているエバーノートは複
また1つ、大切な店が消えた。 連絡が来たとき、街は既に夕暮れ時を迎えていた。「今日中に出て行けと言われた」。都内某所にある行きつけのビストロの主人から、そうメールが入った。メディアにもたびたび登場し、ファンも多い人気店だ。10年近くの間、競争の激しい一等地で営業を続けてきた。 経営が赤字だったわけでも、契約違反があったわけでもない。ただ、スポンサー企業の業績が悪化し、急遽、店を閉めるよう言われたとのことだった。釈然としないまま、会食後、最終の電車でその店に向かった。店内では企業側の担当者や行きつけのファン、飲食店関係者らが渋面を作っていた。 荷造りには数時間を費やした。店の味を支え続けた鉄鍋やミルクパンや秤を抱えて店を出たとき、時計の針は明け方の4時を回っていた。虚脱感を覚えながら各々無言でタクシーに乗り、慣れ親しんだ店を後にした。 個人店が消えてゆく。 「先月まであった店が、今月行ったら
今回は趣向を変え、「部下が上司に言ってはいけない言葉」のワースト10を発表する。言葉の選定と順位はあくまでも私個人の主観に基づく。私なりの根拠も記しておく。 ワースト10は私が長年のコンサルティング活動の中で蓄積してきた「言い訳集」を基にしている。私はもっぱら現場の営業担当者を相手にしており、彼らはありとあらゆる種類の言い訳を駆使し、「できない理由」「できていない理由」「できなかった理由」を私に言ってくる。 同じ言い訳を彼らは上司の営業部長や課長にもしている。そうした言い訳はいずれも「部下が上司に言ってはいけない言葉」である。つまり、今回のコラムでは矛先を「上司」ではなく「部下」に向ける。 「なぜ上司の肩を持つのか。ダメ上司が沢山いるから何事もうまくいかないのだ」と思われた「部下」の方がおられるだろう。 実は、ずいぶん前から私は「ダメ上司」という物言いに違和感を覚えてきた。「上司」や「管理
グーグル、フェイスブック、ツイッターなど、人々の生活や働き方を変える技術と衝撃をもたらすインターネット企業を数多生み出してきた米シリコンバレー。この地にまた1つ、世界を変えようとするネット企業が脚光を浴びている。 その名は、エバーノート。パソコンやスマートフォンなど、様々な情報端末で作成した「メモ」をインターネット上に一元管理できる「Evernote」を提供する。極めてシンプルなコンセプトと使い勝手の良いサービスは瞬く間に心を捉え、利用者は急増。2008年のサービス開始から4年で、世界の利用者数は約4000万に到達し、日本、中国、ヨーロッパなど、世界的なサービスとなった。 当然、投資家もエバーノートを放っておかない。セコイアキャピタルやメリテックキャピタルパートナーズなど、シリコンバレーの著名なベンチャーキャピタルが同社に出資している。会社評価額は既に10億ドル(約800億円)規模となり、
最近、神門教授は『日本農業への正しい絶望法』(新潮新書)という本を出された。かなりショッキングなタイトルだが。 神門:昨今、農業論議が華やかだが、ほとんどの人が農業問題の本質というのが分かっていない。そもそも農業自体が分かってない。農業の定義って分かります? 農産物を作ることではないか。 神門:農産物というのは食用動植物だ。世界中どこを探しても、野菜なり米なりを自分の体で作る人間はいない。人間が光合成するわけではないのだから。農業の主人公はあくまでも動植物だ。ところが、巷で「識者」の顔をして農業問題の解説をしている人の中で動植物の生理がわかっている人がどれだけいるのだろうか。農業の本質はものすごく単純かつ深刻だ。それは日本の耕作技能が崩壊の危機に瀕しているということにほかならない。 農家の腕がどんどん落ちている 今、野菜の栄養価がどんどん落ちて、収量変動も大きくなっている。これは農家の腕が
世界に冠たるIT(情報技術)企業、米グーグル。新しいテクノロジーと特異なビジネスモデルでこの10年の世界を牽引してきた企業の1つだが、もしかすると40代以上の世代にとっては、こんな印象が心の中にあるのではあるまいか。 「グーグルもそうだが、新進のIT企業の主役たちは30代以下の若い世代。自分たちの出番はこれまでもなかったし、これからもないだろう」 事実、日本でもITの新しい流れを生み出したのは、ミクシィ社長の笠原健治やグリー社長の田中良和ら、1976年前後に生まれた30代半ばの「76(ナナロク)」世代だった。 もちろん40代以上に活躍の場がなかったわけではない。中間管理職や財務、広報、人事などの専門分野の担い手として今なお活躍中のミドルもいる。だが、新しいうねりの草創期から事業の中枢に携わってきた人はほとんどいないのではないだろうか。 ところがグーグルの日本法人であるグーグルジャパンの幹部
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