法務省が社外取締役の選任義務づけを見送るのは、経営の自由度を失いたくない経済界の意向に沿ったものだ。だが、オリンパスや大王製紙など企業不祥事が相次ぎ、海外投資家らの日本の企業統治に向ける視線は厳しい。市場の信頼を失えば、投資マネーが日本から流出し、日本市場の地盤沈下が加速しかねない。 「社外取締役であれば常に適正な監督を行うとはかぎらない」。経団連は今年1月、法務省に意見書を提出し、社外取締役選任を義務づける動きを牽制(けんせい)した。損失隠しがあったオリンパスも複数の社外取締役を置いていたが、一部経営幹部の暴走を止められなかった。 経営者を外部から招くケースが多い欧米に比べ、日本は内部昇格が主流だ。義務化されても、「人材が限られ、社外取締役の適任者が少ない」(明治安田生命の心光勝典アナリスト)事情もある。 民主党も昨年11月からの作業部会の議論で、当初は社外取締役の選任義務化を検討しなが