雪面と常識を切り裂いて、エステル・レデツカ(チェコ)が2010メートルの斜面を最速で滑りきった。ワールドカップ(W杯)女子で史上最多の81勝を誇るリンゼイ・ボン(米)らをねじ伏せて、一度も表彰台に上がったことのない22歳が演じた大番狂わせだ。喜びよりも驚きの表情を浮かべ、「間違いかと思った。本当に何が起こったのか分からない」。 可能性をあきらめなかったからこその勝利だった。何しろ、スキーとスノーボードの両競技に出るのは男女を通じて五輪史上初だ。「二刀流」という安易な表現は似合わないだろう。両者は、道具も技術も会場も全く違う二つのスポーツ。そこに「スケート選手がトレーニングを兼ねて自転車競技に挑む」という親和性は一切ない。スノーボード・パラレル大回転(PGS)のソチ五輪銀メダリスト、竹内智香(広島ガス)は「私は一つでも大変なのに。才能と言えばそれまでだけど、ちょっと信じがたい」。 スノーボー