二・二六事件―獄中手記・遺書 作者:出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 1989/02メディア: 単行本 ……十二日朝、十五士の獄舎より国家を斉唱するを聞き、次いで、万歳を連呼するを耳にす、午前七時より二、三時間軽機関銃、小銃の空包音に交りて、拳銃の実包音を聞く、即ち死刑の執行なることを手にとる如く感ぜられる。磯部氏遠くより余を呼んで「やられていますよ」と叫ぶ、余東北方に面して坐し黙然合掌、噫、感無量、鉄腸も寸断せらるるの思あり、各獄舎より「万歳」「万歳」と叫ぶ声砌りに聞ゆ、入所中の多くの同志が、刑場に臨まんとする同志を送る悲痛なる万歳なり、磯部氏又叫ぶ「わたしはやられたら直ぐ血みどろな姿で陛下の許に参りますよ」と、余も「僕も一緒に行く」と叫ぶ、嗚呼、今や一人の忠諌死諌の士なし、余は死して維新の招来成就に精進邁進せん。 ――村中孝次 映画『日本暗殺秘録』のラストの方で、上記のようなシ