マスメディアとインターネットの世界が対立していた時代は、そろそろ終わりに近づこうとしている。いまや局面は、マスメディアにしろインターネットにしろ、どのようにしてマネタイズ(収益化)を確立できるかというフェーズに移りつつあるからだ。そのフェーズにおいては、マスメディアとインターネットは対立関係からどう脱し、新たな関係性をどう確立できるかどうかが問われることになる。 なぜWSJは100万人規模の有料会員制を放棄するのか 例えば、こんな話がある。米国の有力経済紙The Wall Street Journal(WSJ)を買収したNews Corp.のルパート・マードック氏は2007年11月、オーストラリアで開いた株主向け説明会で、同紙を無料化する方針を明らかにしている。WSJといえば世界でも数少ない「コンテンツ有料化に成功した新聞」として知られており、年間50ドルの有料会員の数は100万人に達して
新聞の<われわれ>とはいったい誰か ジャーナリストの玉木明氏は、オウム真理教事件の直後に刊行された「ニュース報道の言語論」という本で、新聞記事の主語は、実は文面にはいっさい出てこない「われわれ」であると書いている。たとえば、次のような記事の文例を見てみよう。「強引とも言える捜査は、小さな山村の集落の住民を相互不信に陥らせ、人のつながりを壊した。警察への憤りも広がっている」(二月二十三日、鹿児島県議選買収無罪判決の記事から)。この記事で警察に憤っているのは、誰なのか。ここで憤っているのは、実は書いた記者個人という「わたし」なのだが、しかし記事の文脈では「私が憤った」とは書かれていない。あくまでも社会全体の「われわれ」であるというスタンスを取って書かれているのだ。玉木氏は前掲の書籍で、以下のように書いている。 ある特定の観点を<われわれ>の観点とみなすこと、特定の主張を<われわれ>の名において
毎日新聞の連載「ネット君臨」について、その後私の取材活動にいくつかの進展があった。時系列から言えば、まず第一に、毎日新聞社から「ネット君臨」座談会に出席するよう求められた。ちなみにこの要請は、Cnetの前回のエントリーをアップロードした前日のことで、前回のエントリーを見て座談会出席の依頼が来たわけではない。ちなみに座談会の内容は、毎日インタラクティブで公開されている。 第二に、これに合わせて私は取材班に取材を申し込んだ。正確に言えば、毎日新聞社長室広報担当に電話し、その上で質問要旨を書いたファクスを送り、インタビューに応じていただくように申し入れたのである。広報担当者とはその後数回のやりとりがあり、20日に毎日新聞社編集局長応接室で取材が実現した。私としてはネット君臨取材班の花谷寿人デスクやTキャップ、I記者らに対応してもらえればと思っていたのだが、インタビューに応じてくれたのは、同社編集
5年間にわたって「長期休暇」をとっていた奈良市の元職員が、職務強要の容疑で逮捕された。この事件の本質は、問題の男が部落解放同盟の支部長だったという点につきる。一方、同和事業をめぐる不祥事があいつぐ大阪市では、関市長が「(部落を)特別扱いはしない。過去のやり方とは決別する」として同和事業の大幅な整理を打ち出した。この種の事件を黙殺してきたメディアも、この問題を取り上げるようになった。ようやく同和のタブーが破られはじめたのだろうか。 関東に住む人には、なぜ解放同盟がそんなに強いのか想像できないかもしれないが、関西に住む人にはたいてい何か思い当たる経験があるだろう。私の出身は京都で、高校の学区の中には日本最大の被差別部落があったので、校内で解放同盟と対立組織の乱闘が起こったり、教師が生徒の面前で「糾弾」されるなどの事件は珍しくなかった。 メディアの差別語を作り出した責任も、解放同盟にある。あ
原題:Leaders: Who killed the newspaper? (August 26th, 2006) Special report: More media, less news (August 26th, 2006) またしても随分間が空いてしまった。実は外交ネタを3ページほど書いていたのだが、しばらく書かずにいるとどうも「勢いで仕上げる」ことが出来なくなる。唸った挙句に没フォルダ行きにしていたら1ヶ月以上が過ぎてしまった。 それでも久々にブログを書く気になるくらいに、今回の記事は出来が良かった。一言で記事をまとめるなら、これから新聞は大変ですね、という、ありふれた結論になっているのだが、細かいデータがちりばめられた丁寧なつくりの記事で、思索のヒントを与えてくれる。The Economistはこの手の記事作りが非常にうまい。 もう少し丁寧にまとめておこう。まず、新聞業界の根本
著者プロフィール:新崎幸夫 南カリフォルニア大学のMBA(ビジネススクール)在学中。映像関連の新興Webメディアに興味をもち、映画産業の本場・ロサンゼルスでメディアビジネスを学ぶ。専門分野はモバイル・ブロードバンドだが、著作権や通信行政など複数のテーマを幅広く取材する。 ネット全盛のいま、“紙の新聞に未来はあるのか?”といった議論がしばしばなされる。先日は大手新聞社の社会部長が、「ネットと比べ、新聞は見出しや記事の大きさからニュースの価値判断が分かる」と話した(参照リンク)。今回は、新聞業界についてMBA的知識を織り交ぜつつ分析してみよう。 筆者の結論は、単純だ――新聞社に未来はない。新聞のどこが強くて、どこが弱いのか? なぜ、新聞のビジネスモデルは崩壊したのだろうか。 新聞社の「圧倒的取材力」 まず最初に、大手新聞社のどこが強いか確認しておこう。多少なりと報道現場を見てきた者として言わせ
日経新聞とかを読んでいたら、ライブドアの対比として、はてなの名前があがっていました。まあ、「ライブドア→金儲け系会社」であり、「技術系会社だとアメリカにGoogle」があり、「Googleみたいな日本の会社として」はてながあげられたという感じなのですが。 いやぁ、はてなが評価されるのは、はてなのサービスをよく使っているおいらとしてはうれしくはあるんですが、「ライブドアはひどいけど、はてなはいい会社だ」といったような取り上げ方はされてほしくないという気持ちもありますね。 というのも、そういう取り上げ方をされるのは、単に「ライブドアの対比としてのはてなという商品」としてなだけが気がするのです。 ライブドアの場合を考えてみましょう。ライブドアという会社は、若者がやっていて、結構過激なこともいうし、キャラクターもおもしろい。こりゃテレビ的においしいぞ、ということで消費され続けてきたわけです。
NHKの持つ膨大なコンテンツがネットで全面解禁になるかもよスゴイね!という類の話が幾つかのメディアで報道されて話題になっている。 折りしもフランスでは、国立視聴覚研究所(INA)のアーカイブ10万件がインターネットで閲覧可能 になったばかりだし、「すわ日本もか!」と盛り上るのは無理も無い。 しかし、日本のメディアというのはどこまでも信用ならない様だ。油断のスキも無い。 まずは5月5日早朝の読売記事から見てみよう。以下、全文引用。 NHK番組のネット配信、07年度にも全面解禁 竹中総務相の私的懇談会「通信・放送の在り方に関する懇談会」(座長・松原聡東洋大教授)は4日、NHK番組のインターネット配信について、2007年度にも全面解禁する方向で最終調整に入った。 約55万本にのぼるNHKの番組を有効活用する狙いで、5月中にまとめる最終報告に盛り込む。 NHK番組のインターネット配信は、総務省の指
1 名前:ままかりφ ★ 投稿日:2007/02/22(木) 23:45:39 ID:???0 ネットにはマスメディアに対する不信が充満している。小紙をはじめこのところメディア各社で相次いだ不祥事は、その傾向にますます拍車をかけた格好だ。 その一方で、メディア側からの反撃と言うべきか、ネットの「闇」に焦点を当てた記事の増加も目立つ。いくつかの「炎上」や「祭り」は事件として取り上げられ、「匿名 群がる悪意」「ネット右翼」といった見出しが紙面に躍った。 ただこれらの批判は、ネットでは今ひとつピントの外れたものとしてとらえられているようだ。取材の一面性、結論先にありき臭…反論はさまざまだが、要は悪でも善でもない事件の扱い方が不得手という、メディアの切り口への不満があるのは間違いない。 硬直した構図に当てはめて描かれる分析は、取り上げた現象が悪意か善意か、右か左かという表層に気を取られ、「
「政治とカネ」の報道は魔女狩りと化している 今回は、マスコミが報じる「正義」について話したいと思う。 「政治とカネ」に関する最近の新聞の論調やテレビの報道を見ていると、これはちょっと危うさを感じる。「政治家は身ぎれいでなければいけない」……これは確かに正しい。しかし、マスコミは過剰反応し、国民は、行き過ぎた潔癖症に陥っているのではないだろうか。 ビジネスにはビジネスのルール、政治には政治のルール 僕は作家を生業としている。作家としての活動は「ビジネス」とみなされるので、収入と支出は税理士にチェックしてもらい、税務署に申告をしている。経費がたとえ1円であっても、領収書を貼り付ける。「ビジネス」の場合、これがルールだからだ。 いっぽう政治資金規正法は、5万円未満の支出の場合、領収書を添付する必要はないというルールを定めている。にもかかわらず、5万円未満の支出に対する領収書を要求し、そ
報道バラエティとか言われてるやつのこと。とりとめのない雑談です。 まず、コメンテータとかいう人いらない。芸能人とかスポーツ選手だけでなく、評論家とか学者でもまるっきりの専門外のことについて適当なこと言いすぎ。「私にはわかりません」と言えないのか。印象だけで居酒屋談義みたいないい加減なこと言うのは、茶の間でやってればいい。そっち側でやるな。どうしても外せないなら、そいつらがしゃべるのと同じだけの時間を使ってマトモな統計資料の紹介をするとかしてほしい。 もちろんコメンテータとは逆の、専門分野の解説者がいるのは良いけど。 それとキャスターが感想言いすぎです。とにかく余計なことしゃべりすぎ。補足するのはいいけど、アンタの考えには興味ない。あとタレント使いすぎ。住宅販売会社やら食品会社やらのCMに出てる人に、住宅や食の安全について報道番組で云々させてるというのは、正気の沙汰じゃない。 ウケそうな事件
米テレビ業界の最新動向を探るためにこの4月,ラスベガスに飛んだ。当地では毎年,日本の民放連に当たる全米放送事業者連盟(NAB)が世界最大の放送関連の祭典「NABショー」を開催している。今年の主役はテレビ局ではなく通信事業者だ。会場には地域通信大手のSBCコミュニケーションズとベライゾン・コミュニケーションズの首脳が乗り込み,放送市場への進出を柱とした次世代の事業構想を明らかにした。両社とも,ブロードバンド回線を通じて各家庭のテレビに番組を流すという。 こうした通信事業者に対して,米国のテレビ局関係者は協力的だ。自社のテレビ番組の供給に前向きな姿勢を示す。一方,日本でもソフトバンクグループやKDDIなどの通信事業者がブロードバンド回線を使った放送サービスを始めた。しかしNHKや民放テレビ各局の協力は得られていない。米国取材を通じて見えたのは,日米のテレビ局の似て非なるビジネスモデルだった。
「人類の急速な進化で民族間の差が拡大」研究報道が抱える問題 2007年12月14日 社会 コメント: トラックバック (1) Brandon Keim 米国の人類学者チームが、今週『米国科学アカデミー紀要』(PNAS)に発表した論文の中で、以下のような研究成果を発表している。 現代の医療や社会保障制度の発達によって、[以前であれば死んでいた人の命が助かっているという理由で人類の進化の速度が遅くなっているという仮説もあるが、]進化のペースが落ちたという事実はない。それどころか、食生活や気候、ライフスタイルの変化の影響で、進化のペースがますます速くなっている[自然淘汰はこれまでとは別の形で行なわれ、自然淘汰の速度は増している。過去5000年間の遺伝的変異は、それ以前の人類と比べて100倍という急増を見せている。]。しかも、さまざまな特徴を持つ集団ごとに、異なるかたちで進化が進んでいるようだ。
Disclaimer このブログは高広伯彦の個人的なものです。ここで述べられていることは私の個人的な意見に基づくものであり、私の雇用者には一切の関係はありません。 Powered by Movable Type 3.17-ja 昨日開かれていたセミナーに関する、ITmedia の記事より。 ■“テレビCM崩壊”時代、ネット広告の役割とは テレビCMの効果が薄れてきたと言われ、ネット広告に注目が集まっている。ネット広告ならではの特性や最近の動向を、広告界のキーマンが語った。 どうなんでしょう。テレビCMを否定し、ネット広告が凄い、なんていう話自体が、なんかの脅威論みたいですけど、実際にはそれぞれをうまく使いこなせばいいんであって、「テレビCMはダメ、これからはネット」なんて話を“広告界のキーマン”が話をしてたりすると、“広告界”自体お寒いですよね。そんなんでいいんでしょうか。 「テレビCM
J-CAST ニュース : 不二家「社長発言」に抗議 TBS「捏造問題」重大局面 TBSの捏造報道は日常茶飯事なのかもしれないが、不二家の「チョコレート再利用」の件は、物証によって意図的な捏造が証明できるという点で、前例が無いものである。TBSの井上社長ご自身がこれを蒸し返しているので、改めてまとめてみようと思う。 物証とは、TBSから不二家に出された「みのもんた朝ズバ!1月22日放送分について」という文書である。これは、不二家の第2回「信頼回復対策会議最終報告」記者会見の添付資料である、【別紙資料2】1月22日放映のTBS『朝ズバッ!』での不二家関連報道に関する問題について(PDF)の最後に添付されている。 ここに、1月20日にTBSから不二家にした質問内容として「カントリーマアムについて消費期限が切れたので捨てようとしたら上司に怒られた。それを再度新しいパッケージに入れて製品としていた
実録!日テレ「ザ・ワイド」によるマスコミ被害(1) 2006年02月14日07時28分 / 提供:PJ 【PJ 2006年02月14日】− ぶしつけな取材方法や、取材される側の意にそぐわぬ番組編成など、テレビのワイドショーによる「マスコミ被害」が深刻化して久しい。そんな中、ライブドア事件で記者自身が日本テレビ系列28局全国ネットで放送されている「ザ・ワイド」によるマスコミ被害に遭遇した。同番組は司会者に良識派の草野仁氏を据えるが、現場を監督するプロデューサーや、その下で働くディレクターの横暴ぶりは目に余るものだった。また、抗議に対して、日テレからは誠意ある回答も得られなかった。「ザ・ワイド」によるマスコミ被害の実録を紹介しよう。 ことは2月6日午後14時51分、日本テレビ「ザ・ワイド」のディレクターからPJニュース宛の1通のメールから始まった。記者が雑誌の「週刊現代」に書いた記事の件で
■ 素人メディアに脆弱性報告文化を破壊されるおそれ みなさんは、「ニセ脆弱性」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。 これは、見かけは脆弱性のようだけれども、実は、脆弱性とはとても言えないもののことで、「疑似エクスプロイト」や「似非ゼロデイ」などとも呼ばれます。 「そんなものがどこにあるんだ」とお思いの方も、例として、「サニタイジング」や、「hiddenは危険」や、「非接触スキミング」などの名前を挙げれば、「ああ、そういうもののことか」と納得されるかもしれません。それとも、かえって、「え?」と驚かれるでしょうか。 例えば、皆さんもよくご存知のように、「サニタイジングは脆弱性対策にいい」と盛んに言われ、ひところは大手コーディネーション機関もこぞって解説を出すほどのブームになりました。サニタイジングがよく語られたのは、もちろん、サニタイジングの対策効果に裏づけがあると信じた人が多かったから
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