「静かな情熱を湛えている」というとかっこいいけれど、食卓をはさんで目の前にいても「あら、あなたまだそこにいたの」と妻から言われるくらい普段存在感が薄くて、激しい情熱とは無縁の私。そんな私が『情熱でたどるスペイン史』という、ちょっと恥ずかしい表題の書物を公にしてしまったのはなんでかなあ、と思わないでもありませんでした。 しかしその恥ずかしさを打ち消すように文献を読み漁り、必死に考えをまとめてできあがった本書には、やはりこのタイトルこそがふさわしいと、今は思っています。 「情熱のスペイン」という惹句は、たしかに観光案内やテレビの旅行番組ならともかく、中高生を対象にした真面目な書物には不適切だと注意されるかもしれません。そして情熱のほとばしるスペイン人の活動として、フラメンコに闘牛、レアル・マドリードやバルサのサッカーへの熱狂、カルメンやドン・フアンの激しい恋愛、こんなものを取り上げていては、ス