1968年に出版された新書。多くのページは水俣病の発生から1968年当時までの状況を主に新聞記事を使って紹介している。著者は1961年ころから個人的に水俣病の調査を始めているのだが、ここでは極力個人的な体験を後ろにおいている。新聞記事や委員会報告書などを使っているのは、客観的な記録を目指していることと、病気と地域から捨てられた漁民の生活の悲惨さを強調するためであるだろう。それは成功しているとはいえ、公害に対する著者の憤りはうしろに隠れていて、それはまた別の本で読まなければならない。 (追記 2023/8/6 原田正純「水俣病」岩波新書の刊行は1972年。) さて、自分なりに重要な指摘を抜粋しておく。 ・この国の公害は明治時代後期から始まっている。足尾、別使銅山の鉱毒事件、日立の煤煙事件が有名であるが、そのほかにもいろいろある。 ・場合にもよるが、当時は民衆、一般者、貧困者の主張を認める結果