宮崎駿の映画「風立ちぬ」は、ゼロ戦の設計者・堀越二郎を題材にした物語だ。堀越は実在の人物だが、映画全体は評伝ではなく、フィクションの色彩が強い。とはいえ、物語は主人公・二郎による新型飛行機の設計を軸として展開していき、その部分は比較的史実に近い。だから、一種の製品開発プロジェクトのストーリーとしても、見ることができる。その中における主人公の職務上のポジションは、「設計主任」だ。設計主任とは何か、その役割は開発プロジェクトのプロジェクト・マネージャーとは何が違うのか。そんなことを、今回は考えてみたい。 設計主任に対応する英語はいくつかありうるが、チーフ・デザイナーあたりが最も一般的だろう。ところで、チーフ・デザイナーというと、もう一つ思い出すストーリーがある。ハインラインの「月を売った男」だ。これは月世界旅行の夢にとりつかれた主人公ハリマンが、月ロケットを完成させるまでの物語である。小説が書
スーパーの中で荒井由美の「ひこうき雲」が流れていた。宮崎駿の映画『風立ちぬ』の主題歌(エンディング・テーマ)として使われているからだろう。1973年、今からちょうど40年前の曲である。 若い頃の荒井由美は歌詞がとてもうまい。説明的なことはすべて省いて、それでも聴いている者にはその情景が思い浮かぶ。そういう詩的な才がある。「白い坂道が 空まで続いていた ゆらゆら陽炎が あの子をつつむ」ではじまるこの歌は、とても静かな曲である。歌詞のキーは、“他の人には分からない” だ。「分からない」という言葉だけは2回繰り返され、「・・けれど、幸せ」とつづく。 この曲は、他人には分からない、孤独な世界で、それでも幸せという感情を唄っている。それは、「みなが分かり合い、みんな一緒に幸せになれる」と信じていた'67年〜'71年までの、若者の反抗の時代が終わった後につくられた、心の歌だ。いかにも、宮崎駿の最後の映
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