翻訳者の間で"うんのさんの辞書"と呼ばれ親しまれている辞書がある。 「ビジネス/技術 実用英語大辞典」(海野文男・海野和子編)がそれである。 一説によれば、ある翻訳能力検定試験会場で受験者に一番多く持ち込まれた辞書が、通称"うんのさんの辞書"だったそうだ。 翻訳者で「辞書」づくりを思い立つ人は少なくないであろう。 自分の専門分野の用語を集めた用語集、市販の辞書には飽き足らず膨大な書き込みが加えられた和英辞典―――。 しかし、本当に商業出版物として刊行するとなると、思い立つ人の数とほぼ同等に諦めた人がいるのが実状ではないだろうか。 では、翻訳者の一つの夢ともいえる「辞書づくり」を果たした海野夫妻とは、どういった方々なのだろうか。 ―― そもそも辞書づくりを思い立ったキッカケは何ですか? 文男 まずこれが基本的に大事なことだと思うんですけど、英語が好きだ、というのが根底にあります。それと、実務