北方領土返還を求める日露交渉が難航しています。二度目の首相に就任以来、安倍首相が北方領土問題の解決に並々ならぬ姿勢で臨んできたことは誰の目にも明らかです。在任6年の間にプーチン大統領との首脳会談はじつに25回に及びます。しかし、核心部分はしばしば「差し」の会談(通訳のみ同席)で話されてきましたので、肝心の情報は厳格に秘匿され外部の者からは窺い知ることはできません。以下、全貌を把握することが難しい日露交渉の現状を改めて分析し、私なりの考え方を述べたいと思います。本論に入る前に、まず議論の前提として、いくつかの歴史的事実を整理しておきたいと思います。 1.日本の主張(固有の領土である北方4島の主権は日本にある)とロシアの立場(第二次大戦の結果、4島はロシア領となり主権はロシアにある)は、真っ向から対立している。 2.近代国際法の下、日本とロシアとの間で初めて国境線を確定した「日魯通好条約」以来