「本の解剖学」というワークショップを図書館の依頼で立て続けに行った。参加者に本(特に古い上製本)をカッターで解体してもらうというただそれだけの試みなのだが、参加者は単に本をカッターで切り刻むのではない。見返しをはがし、表紙を取り去り、寒冷紗を抜き、かがりの糸を切って折丁をばらぱらにするという製本と逆の工程を体験してもらい、逆の面から製本と印刷を理解してもらおうというものだ。図書館で告知したイベントということもあるが、本がなにより好きという人が多く、参加者全員熱心に取り組んでいただいた。 もっとも、実際の解剖作業はすんなりとはいかない。参加者一同カッター片手に苦闘されていた。みなさんもやっていただくとわかると思うが、「本の解剖」は簡単なことではない。簡単に壊れないからこその製本であって、そもそも本がちょっとカッターで切ったぐらいで分解するようであっては本の役割を果たさない。表紙を剥がすという