「書名を覚えたうえで買い物にこい」 書店員の恨み節の定番はこれだ。書店員たちは日々こんなに努力しているのに報われないと漏らす。しかし、基本的なことがわかっていない。努力の方向が間違っていることに気がつかない。彼らは、自分たちが中間搾取業であることを理解していないのだ。 利便性、価格で戦えなくなるとしたらどうするか。簡単に思いつくのは規模の利益に望みを託すというもの。書店の大型化や立地戦争の勃発といったことは、書店の未来を危ぶんだ大手チェーンたちの苦肉の策なのだが、中小書店や地方書店はこの戦争(ネット書店)を悪だと決めつけるばかりで、真剣に考えることがない。思考停止してしまっている。書店はいいものだといくら念仏を唱えたところで、潰れるものは潰れるのである。かつてのレコード店、現在のゲームショップがそうであるように、自己の正当性を訴えたところで消費者にとっての価値がなければ消えるしか