大人になると、夏は純粋な夏となる。 そう、恋の予感や冒険の予感といった不純物が抜けて、暑さだけが残るのだ。 夏とはつまり、苦痛である。 そんな事を考えながら、テラスでよく冷えたシャンパンを飲んでいると、さっきまで寝ていた子供が私のところにやって来て 「お父さんおはようございます。やはり夏はどこにも行かないのが最上の贅沢ですねえ。今日は冷房の効いた部屋でのんびり過ごす事にしましょうや」 と言ってくれた。私は唇をナプキンで拭きながら 「ありがとう。きみはまだ2歳なのにずいぶん気をつかってくれるじゃないか」 そうお礼を言い、頭をなでてやる。さすが私の子供だ。 夏は冷房の効いた部屋でゴロ寝。冬は暖房の効いた部屋でゴロ寝。 人生の基本がよくわかっている。 というような想像をしながら、蒸し暑い部屋の窓を開け、朝起きて挨拶がわりのように泣き叫ぶ子供に冷蔵庫からバナナを1本とって与えてやる。子供は笑顔にな