なぜ,これをフランスが,EUが,行うのか。ご存じの方も多かろうが,Google対抗軸である。世界の検索エンジンシェアの大半を握るインターネットの巨人は,既存のコンテンツ/データのデジタル化にもとびきり熱心だ。「Googleブックス」というプロジェクトがある(図2)。古今東西,世界には1億3,000万冊の書籍があるそうだが,それをすべてスキャンしてデジタル化し,OCRをかけてインターネットで全文検索を可能にする。書籍の著作権が切れていれば全文が表示され,切れていなければ該当箇所の抜粋などが表示される仕組みである。いわば全世界電子図書館化である。こちらもすでに3,000万冊がデジタル化済みだという。 EUはこれに危機感を持った。「域外の,1民間企業に文化のデジタルアーカイブを握られていいのか」との声が挙がった注2)。民間企業であれば利益優先,倒産もあり得るといった指摘もあったが,それ以上に文化