特派員リポート 駒木明義(モスクワ支局長) ロシアが世界に誇る世界遺産、エルミタージュ美術館。古今の有名絵画はもちろんのこと、ロシア皇帝の宮殿だった壮麗な建物や豪華な調度品も見どころだ。だが今回は、世界からやってくる観光客の目に触れることのない、薄暗い地下を訪れた。エルミタージュの所蔵品や建物をネズミの食害から守る重責を担っている猫たちに会うためだ。 人目につかない中庭に、地下への入り口がある。その先のドアには、「Коты Эрмитажа」と書かれた金のプレート。「エルミタージュの猫たち」という意味だ。ドアの下の方は、いつでも猫が出入りできるように、30センチ四方ほどの穴がくりぬかれている。 扉の奥に、トンネルのような地下道が広がっている。その一画に、小さな動物病院のような施設がある。フランス語で「隠れ家」を意味する「エルミタージュ」の名にふさわしい雰囲気だ。 「エルミタージュには現在、