処理水問題が話題になる中でも、観光客でにぎわう海辺の水産市場=中国遼寧省大連市で2023年10月2日、河津啓介撮影 東京電力福島第1原発の処理水海洋放出が始まって2カ月が過ぎた。中国政府は反対を続け、日本産水産物の輸入全面停止を解除する気配はない。日中平和友好条約の締結から45年という節目に、両国関係は閉塞(へいそく)感が強まっている。 中国の建国記念日に当たる10月1日の「国慶節」前後の大型連休。日本企業が多数進出し、水産業も盛んな中国東北部の港湾都市、遼寧省大連市を訪ねた。 ここに生産拠点を構える食品会社「松井味噌(みそ)」の松井健一社長(59)に、処理水問題で揺れる日本食業界の現状について聞きたいと思ったからだ。兵庫県明石市で100年以上の歴史を持つ老舗で、同業他社に先駆けて1990年代初めに中国に進出した。みそだけでなく、さまざまな調味料を製造し、日中双方の食品会社や飲食店に提供。