どれほどの沈黙が〈金〉なのだろう。騒がしい街に住む私は、車のクラクションも近所の子供の泣き声も聞こえぬまま、いつの間にか眠りに落ちるなんて全く想像できない。小さな町や郊外で暮らしていれば、騒音など聞こえぬまま眠りに落ちるのだろうが、私には無理だ。救急車のサイレンも聞こえないところで眠っているとしたら、死んでるのか、生きているのかもわからないのではないか。 静けさに興味があるのは私だけではない。雑音を除去する実験から生まれた、可能な限り音を遮蔽する空間がある。ミネソタ州にあるオーフィールド 研究所(Orfield Laboratory)の無響室は、〈地球上最も静かな場所〉として、ギネス世界記録を保持している。たいていは、企業が製品の音響テストで利用するが、監視の下であれば、一般の人も無音状態を体験できる。ファウンダーのスティーブ・オーフィールド(Steve Orfield)によれば、体験者が