刑務所に出向いて服役中の囚人たちに料理を教えているかと思えば、無職の人々を対象にした無料の料理学校を設立──ティエリー・マルクスは「2つ星シェフ」としての料理の腕前だけでなく、その「社会派」な活躍でも知られる。そんなマルクスの「インクルーシブ」な経営哲学を、エグゼクティブ向け仏隔月誌「クーリエ・カードル」が掲載した。 パリの高級レストラン「シュール・ムジュール」を率いる2つ星シェフ、ティエリー・マルクスは、およそ10年前に「キュイジーヌ・モード・ダンプロワ(料理への手引)」という学校を共同設立した。その学校は、生徒たちに短期間で調理や食にかかわる技術を教えることで、飲食業界への参入と、業界内での転職を容易にしている。 マルクスがパリに作った新しいレストラン「オノール」でも、誰も排除しない「インクルージョン」の考えに則ってスタッフの10%を採用しており、そのなかにはマルクスの学校を出た者もい