もう数年前になるけれど、東京大学にまだ上野千鶴子先生がいらっしゃった頃、上野先生の企画で「べてるに学ぶ降りてゆく生き方」というシンポジウムが開催された。 上野先生は「浦河べてるの家」に何度も通われて、べてるの家の思想……というか、たぶん、べてるという場の持っている価値観に共鳴されていたのだと思う。東大という「昇っていく生き方」の象徴のような場所に、べてるの家の人たちがたくさん呼ばれて、そこでシンポジウムと分科会が行われた。私はその時、パネリストとして参加していた。 「べてるの家」のことを知らない人もいると思うけれど、ここで説明をすると長くなってしまうので、興味のある方は「べてる本」と言われる、べてるに関する書物を読んで、べてるの家とはどういうところかご自身で感じてほしい。 私は2002年頃からだろうか……、べてるの家という存在を本で知り、ここの方たちと交流し始めた。かれこれ十年近くこの存在