古来「君主国」であった中国が、西欧的な国際関係に中に組み込まれ、「共和国」として生きるプロセスとは、どのようなものであったか。その巨大な軋みのなかで、日中関係はどのように位置付けられてきたか。 気鋭の研究者が、日露戦争から日中国交正常化まで、「日中対立の時代」を事実に即して描き直した力作『対立と共存の日中関係史』より、現代中国理解の基本線を明かした序章を特別に公開しよう。 王朝から共和国へ 中国は、古来、皇帝によって統治されてきた。秦の始皇帝に始まり、清の康煕帝、乾隆帝など、みなそうである。こういう国の形態を「君主国」という。君主の王朝である。 ここでは、理想の政治は「仁政」とされてきた。ようするに、皇帝が人々に仁をなす政治である。「仁」とは、儒教の徳目で、相手をいつくしむことである。 ところが、清朝が倒れる20世紀初頭に、中国は「共和国」に変わった。共和国は君主国とは異なり、一人の皇帝で