世界最大級の教会堂、バチカン市国のサン・ピエトロ大聖堂の、ローマ法皇の名によるミサの開始を告げる澄んだ音色のベルが鳴り響いた。ルネサンス時代やバロック時代の第一級の芸術家が造営に携わった壮麗な大聖堂の一角に、約300人の日本人を中心にした合唱団が控えている。 彼らの前で、黒の礼服に身を包んだ長身の女性が静かに佇み、ミサの進行を見守っていた。168センチの長身、彫りの深い端正な顔だち。指揮者・西本智実さん(48)だ。合唱団のメンバーを見回すと、大きく優雅に、両手を広げ、手と指先がゆったりとしたテンポで柔らかに舞う。厳かに大合唱が始まった。 日本人による祈りの歌は、『ラウダーテ・ドミヌム』『ヌンク・ディミッティス』『オー・グロリオーザ』の3曲――。 それは、ヨーロッパのカトリック教会で古くから歌われ、クラシック音楽の原型にもなったといわれるグレゴリオ聖歌だった。それがなぜか、ヨーロッパから遠く
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