看護婦さんの眠っております隙(すき)を見ましては、拙(つた)ない女文字を走らせるので御座(ござ)いますから、さぞかしお読みづらい、おわかりにくい事ばかりと存じますが、取り急ぎますままに幾重(いくえ)にもおゆるし下さいませ。 あれから後(のち)、お便り一つ致しませずに姿をかくしました失礼のほど、どんなにか思(おぼ)し召しておいでになりますでしょう。どう致しましたならばお詫びが叶(かな)いましょうかと思いますと胸が一パイになりまして、悲しい情ない思いに心が弱って行くばかりで御座いました。そうしてやっとの思いで一昨晩コッソリと帰京致しますと、すぐにあれから後(のち)の新聞を二三通り取り寄せまして、次から次へと繰り返して見たので御座いますが、私の事につきましていろいろと出ております新聞記事と申しますのが又いずれ一つとして私の心を責めさいなまぬものは御座いませんでした。 あの、丸の内演芸館で催されま