日本有数の工業都市・川崎に渦巻くセックス、ドラッグ、ラップ・ミュージック――。俊鋭の音楽ライター・磯部涼が、その地の知られざる風景をレポートし、ひいては現代ニッポンのダークサイドとその中の光を描出するルポルタージュ。 川崎をレペゼンするラップ・グループ、BAD HOPのAKDOWの体に彫られたタトゥー。 川崎は2つの顔を持っている。その名前を聞いたとき、多くの人はベッドタウンと重工業地帯という対照的なイメージを連想するだろう。あるいは、平穏だが退屈な郊外と、荒廃しているが刺激的な繁華街というイメージを。 そして、そういった2つの側面は、それぞれ、川崎市の”北部”と”南部”が担っているといえる。今、北部/南部と書いたが、実際には、同市は東京2区5市と横浜市に挟まれた、北西/南東方向に細長い形をしている。しかし、住民の中には北部と南部という区分を用いる者が多いのだ。例えば、68年に生まれ、多摩
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