おれは気付かぬ間に、どうやら世に言うパラレルワールドとやらへ迷い込んでしまったようだった。 一見同じに見えてもどこかが違う世界、というやつだ。あまりに古典的で使い古された題材だが、小説や映画でしかなかった壮大なSF世界の一端を今、現実に垣間見ているには違いない。 なのにそういった自覚を得るまでに一週間を要し、その間普通に飯を食い、会社へ通い、夜も粛々と真っ直ぐ帰っては妻だけを抱く安穏な生活を、SF小説をたしなむ程度には読んでいたおれが何故おめおめと続けていたのだろうか。 ようやくの休日、いつも通り最寄りのコンビニエンス・ストアへ立ち寄るまで何の疑問も抱けなかったのが悔やまれるが…… いや、おれはまだ随分と早く気付けた方なのかも知れない。それくらいの、人によっては永久に気付けぬほど些細な違いしかなかったのだ。だが読書家としての僅かばかりの矜持も彼方へぶっ飛ばすほど、ここはおれにとって最悪の世