ブックマーク / www.newsweekjapan.jp/column (33)

  • 日本の総選挙より面白い韓流政治ドラマの主役

    今週のコラムニスト:クォン・ヨンソク [12月19日号掲載] 日テレビドラマは低迷しているが、政治ドラマはなかなか面白い。「小泉劇場」「政権交代」に続き、現在の第3シーズン「新党乱立」も、それなりに高視聴率を維持している。先日の党首討論会で11人の党首が並んで手をつなぐシーンには思わず噴き出し、あまりの党首の多さに「AKBか!」とツッコミを入れたくなった。まさに「センター」を奪い合う総選挙では、熾烈な握手合戦が展開されるのだろう。 だが韓国にはもっとドラマチックな「韓流」政治ドラマがあった。その主人公は「韓国のビル・ゲイツ」と呼ばれる、IT企業創業者で元ソウル大学教授の安哲秀(アン・チョルス)だ。政治と無縁だった安は昨年の暮れ、20~40代の若年層の支持を背景に突如大統領候補に浮上し、世論調査の支持率で与党候補を上回った。 この「安哲秀現象」は、手あかが付いた既存の政治家から代表を選ぶ

  • 重慶事件から占う中国の明日

    先月の中国共産党トップの総入れ替え後、数回にかけてこのコラムでも新指導部トップ情報について書いてきたが、だんだん一般の日人読者はあまり中国指導者の詳細な横顔には興味がないことがわかってきた。実際のところ、これまでの経験でわたしもそんな気がしていたのだが、あまりに日の新聞雑誌、そして中国研究者たちが指導者の横顔を事細かに伝えているし、また現実に中国社会でも良くも悪くも「今後の変化」と重なる、トップの横顔分析が盛んなので、ちょっとその真似をしてみたのだった。 確かに、中国の話題は指導者にまつわるものばかりではない。そしてそちらを理解する方が「今の中国を知る」ためにはずっとずっと示唆に富む。このことをわたしは最近、再度深く感じている。 それを痛感したのが、今週発売されて大きな話題を集めている雑誌「南都週刊」の特集記事だった。その特集テーマはずばり「起底王立軍:王立軍の素性調査」。王立軍とは今

  • 習近平の新時代へ

    とうとう、胡錦濤の時代が終わり、習近平の時代が始まった。5年前の中国共産党の党大会で次期指導者として指導部メンバー入りして以来、その動向が注目され、どのような時代が来るのか、世界中のメディアの憶測を呼んできた習近平。世界の主だったメディアは今回の党大会に先駆けて10月頃から次期指導部を占う予測記事を集中させてきた。 今回習が選出されたのは中国共産党総書記という役職で、完全に胡錦濤の職を引き継ぐのは来年3月に開かれる全国人民代表大会で国家主席に選出されてからである。だが実際にはすでに胡錦濤の陰は一挙に薄くなり、習の動向に人々の目は釘付けだ。前回のこの欄で触れた某ネットユーザーの予測通り、胡は軍の指導権を持つ党軍事委員会トップの職も習に明け渡して「裸退」したため、それも仕方ないが。 実のところその習がどんな人物なのか、まだそれほどよく知られていない。老共産党幹部の子弟「太子党」であることは客観

  • それでも日本は走り続ける

    中国は9月30日の中秋節から国慶節(10月1日)の8連休に突入、それが明けると休み前の反日デモが醸造した重苦しいムードから開放された。そして、日でも連休明けのメディアで話題のノーベル賞が、国際情勢に敏感な中国人ネットユーザーたちの間で注目を集めている。 こんな「フェーズの転換」は11月8日を「X-day」とみなしているだろう中国当局にとってありがたいはずだ。いや、これも計算済みだったのかもしれない。だが実際はノーベル賞を見つめるレベルの人たちは片時も先日の騒ぎを忘れておらず、ノーベル賞が証明する「日中国の差」をはっきり意識しているのだが。 それは一部の日人が想像するような単純な「酸っぱい葡萄」ではない。逆に彼らは数年前の民主活動家、劉暁波の平和賞受賞に歓声を上げた人たちで、「酸っぱい」どころか、先月の信じられないような暴動を苦々しく思っている。あわせてGDP世界2位のこの国に何が足

  • 文化交流の本質とはなんなのか

    先日、ツイッターで誰かが「海外で日の家電製品や車のようなハードが評価されていた時代はもう過ぎた。これからはソフトだ。今や日海外で誇れるのはアニメやラーメンのような文化だ」とつぶやいていて、がーんとショックを受けた。 確かに。 アニメはもうさんざん報道されているし、麻生太郎氏が外相を務めた頃にも「最重点文化プロジェクト」とされたのでご存じの方も多いだろうが、北京の街ではここ1年ほどで目を見張るくらいラーメン店が増えた。なぜだかはよく分からないが、2010年に2か月間日に滞在して帰ってきた、ジャーナリストの安替がさんざん「日ラーメンはうまい!」と騒いでいた頃は、日滞在経験がある人以外の一般中国人がラーメンについて語るのをとんと聞いたことがなかった。 なのに、数日前にその安替を中心に中国人ツイーター(ツイッターユーザー)の間でラーメン談義が展開されていて、応答する人たちは「北京のど

  • 「総合こども園」で待機児童は解消できるのか

    政府は2日、少子化社会対策会議を開いて今国会に提出する子育て支援改革法案の骨子を決めた。それによれば、幼稚園と保育所を一体化する「総合こども園」を2015年度をめどに創設し、全国の幼稚園と保育所をこれに移行する予定だ。今回の法案は「待機児童を解消する」とうたっているが、これで問題は解決するのだろうか? 幼稚園と保育所がそれぞれ文部科学省と厚生労働省に管轄され、ばらばらの制度で運営されている現状については、かねてから批判が強い。特に保育所については、申し込んでも入れない待機児童が全国で5万人近くおり、潜在的には80万人の超過需要があるともいわれる。今回の法案では、これに対応するため小規模な保育室や「保育ママ」にも公費を投入し、株式会社や非営利組織(NPO)にも参入を認め、保育の定員拡大を目指すという。 しかしこども園は全面的に規制され、保護者は市町村に希望するこども園を申請する。保育料金は保

    「総合こども園」で待機児童は解消できるのか
  • 事故現場からの生中継

    今一番注目されている高速鉄道事故について、わたしはなんら一次情報を手に入れることができる立場にはない。中国ではジャーナリストには「記者証」所持が義務付けられており、外国メディアも例外ではない。警察が現場を仕切る事件、事故の現場取材など、記者証をもたないフリーランスにはまったく不可能な話なのだ。 だからわたしも、この事件に高い関心を抱いていた人たちと同じように、既存のメディアからの情報によって事態を判断するしかなかった。しかし、わたしのこの「既存のメディア」にはインターネットがかなりの割合を占めている。 中国ではインターネットは「一庶民が公に向けて発言できる場」として大きく利用されているのは周知の通りだが、特にマイクロブログと呼ばれるツールがその情報発信力を爆発的に広げている。日ではマイクロブログと言えばツイッターだが、中国ではそのツイッターへのアクセスがブロックされており、その一方で「微

    事故現場からの生中継
    yoyoprofane
    yoyoprofane 2011/07/31
    "今回の事件ではのっけからマイクロブログへの現場情報が非常に多く、彼らが以前の経験からまず現場で見聞きしたことを規制が出る前に、意識的にマイクロブログに流しているように感じられる。"
  • イラン女子サッカーチームを取り巻く不幸

    暗いニュースが続くなかで、「なでしこ」の優勝は大きな歓喜だった。深刻な災厄を被った経験は、むしろその障害を乗り越えようと、予想以上の力をもたらすのかもしれない。 「なでしこ」の快挙の一方で、別の種類の困難に泣かされているチームがある。以前にこのブログでも紹介した、イランの女子サッカーチームだ。6月6日、FIFAは、イラン女子チームが頭から首まで覆うヒジャーブ(スカーフ)をつけて試合に臨むのは規定違反だ」として、イランのロンドンオリンピック出場権を剥奪した。宗教や政治的シンボルを身に着けてはいけない、というFIFA規定にひっかかったからというのだが、ヒジャーブがダメというのは実質的にイスラーム教徒の女性に「スポーツするな」というようなものではないか、と反発も高まっている。 ヨルダンでもこの決定は波紋を呼んでおり、FIFA副会長となったヨルダン王家のアリー王子が頭を抱えている。チームの中心的プ

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  • 中国で一番有名な日本人、加藤嘉一君への手紙

    今週のコラムニスト:李小牧 [7月6日号掲載] 尊敬する加藤嘉一君へ──。 先日は日の震災をテーマにした香港フェニックステレビのトーク番組の収録、お疲れさまでした。このコラムをまとめた『歌舞伎町より愛をこめて』(阪急コミュニケーションズ)の中国語版『日有病』の前書きも書いてくれてありがとう。中国版ツイッター新浪微博に60万人のフォロワーがいる君に書いてもらえば、完売間違いなしです。 君は18歳のときに単身、名門の北京大学に留学。05年の反日デモのときに留学生会長として流暢な中国語でテレビにコメントして注目を集め、以後、中国でジャーナリストとして活躍を続けています。中国語で出版したも既に6冊。君が「中国で一番有名な日人」なのは間違いありません。まさに「勢如破竹(破竹の勢い)」ですね。 私と加藤君は最近、日で共著を出した仲でもあります。しかし私は人生の先輩として27歳の君に伝えなけれ

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  • 歌舞伎町案内人が東京を去らない理由

    今週のコラムニスト:李小牧 [4月20日号掲載] 中国版ツイッター「新浪微博」をご存じだろうか。登録者数が1億人を超し、AV女優の蒼井そらやサッカーの中田英寿も利用するサービスだ。先日、私もアカウントを開設したところ、たちまち1万3000人のフォロワーが集まった。 突然始めたのは、蒼井そらチャンのファンだからではない。今度中国で出版する拙著の宣伝に使ってほしいと出版社から頼まれたのが最初だが、今は大震災に襲われながら、必死に頑張っている日当の姿を中国に伝えたいという思いで漢字140字の「つぶやき」を続けている。 既に報じられているように、70万人といわれた在日中国人のうちかなりの人々が余震と放射能を恐れて日を脱出した。20万人という説もあるほどだ。中国行き航空券の値段は片道20万円近くにまで跳ね上がり、それでも買えない人たち3000人がチケット待ちで成田空港に泊まり込んだ。航空券が

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  • 大手書店ボーダーズ破綻で電子化に駆け込む米出版社

    アメリカの書店チェーン大手のボーダーズが破産申請をした2月16日、偶然にも私は電子書籍時代の新しいテクノロジーを話し合うTOC(Tools of Change)という会議に参加していた。 会議に来ていたのは、ニューヨークを中心とした出版関係者と、電子書籍技術を開発するテクノロジー関係者たち。ボーダーズのニュースはことに出版関係者にとっては悲報だったようで、会議中はまるで葬式のような暗いムードが漂っていた。 出版関係者にとって、書店は自分たちが大切に手作りした書籍を読者の前に並べてくれる重要な存在だ。しかもボーダーズは、ミシガン州の大学町の小さな古屋から起こし、長年家族経営でチェーンを広げていったという歴史がある。を大切に思い、愛する人々によって育てられてきた書店なのである。現在は、全米に650以上の店舗を構える大企業になっていたが、それでも出版社にとっては同志のような存在だったのだ。

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  • エジプト:軍とイスラム勢力にまつわる「誤解」

    一週間前、エジプトの反ムバーラク勢力が「怒りの日」に結集したときには、こうも急速に事態が展開するとは予想できなかった。3日ごとに組織される数十万規模のデモ、外出禁止にも従わず終日ムバーラク退陣を叫ぶ若者。米政権も現政権を見限り、30年間のムバーラク大統領の治世は終焉を迎えつつある。 「ムバーラク政権の独裁に反対する民衆に、軍も共感し、反政府勢力のムバーラク下ろしが勢いを増しているが、野党のなかで最も強力なイスラーム主義のムスリム同胞団が新体制下で支配的になり、イランのようになるから危険だ」――。これまでの報道振りをまとめると、こんな感じだろう。だが、このロジックに強い違和感を覚える。 第一は、軍に対する認識である。ムバーラク政権は、52年以来続いてきた紛うことなき軍事政権である。52年の共和制革命を担った主役として、以来軍は支配層の中核にあった。ムバーラク批判が強まるにつれて、軍が真っ先に

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  • アメリカの家の前にはなぜ芝生があるのか? | やじうまUSAウォッチ | コラム&ブログ | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

    アメリカの郊外住宅地のアーキタイプ、レヴィッタウン 「Get off my lawn(わしの芝生から立ち退け)!」 映画『グラン・トリノ』で、ライフルを構えたクリント・イーストウッドがチンピラたちに怒鳴った時、アメリカ映画館では爆笑が起こった。 なんで? アメリカ人に聞いてみると、あのセリフは頑固ジジイが庭に入って来た近所の悪ガキを叱る時の常套句だそうだ。昔、日にもいたでしょ。子供嫌いのジイさん。野球のボールがそのジイさんの庭に落ちたりすると怖くて入れないわけ。 でも、アメリカの場合、芝生にはもっと重要な意味がある。アメリカン・ドリームの象徴なのだ。 自分が生まれて初めて芝生を持ったのは2007年。住宅バブルのピークで家を買ったのだから大馬鹿だったが、それは置いといて、感慨深かったのは、前庭の芝生に立った時だ。 アメリカ映画テレビで観た一戸建てには必ず前庭に芝生がついていた。わずか1

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