黒部川の電源開発に伴って絶壁に刻まれた「水平歩道」を歩く「日本一危険な温泉ツアー」に9月中旬、記者が参加した。黒部峡谷鉄道(トロッコ電車)の終点・欅平と約12キロ上流の阿曽原温泉を1泊2日で往復。黒部峡谷の圧倒的な自然と、それに挑んだ先人たちの痕跡に触れた。 「これはツキヨタケの幼生。しっとりしてて食べられそうだけど、毒ですよ」。ガイドを務める阿曽原温泉小屋の経営者、佐々木泉さん(55)が丁寧に教えてくれるが、足元は高さ約300メートルの絶壁。「水平歩道」の幅は1メートルほどしかない。アップダウンは少なく、黒部川第4発電所からの送電線の巡視路になっていることから今も関西電力が整備しているが、転落すれば命に関わる。 「日本一危険」と銘打ったこのツアーは、北陸新幹線開業などにあわせて黒部・宇奈月温泉観光局が今夏初めて企画し、8月下旬~9月中旬に6回催された。「水平歩道」には、かつて渡されていた