ここまでの話 前回は,氷の中の水素原子(正確には水素イオン=プロトン)がice ruleという制約条件の範囲でランダムに動いていることを説明した.また,それから順列組み合わせの式で求めたエントロピ―の計算が温度計や魔法瓶を使った実験とぴったり合う,という話をした.「目に見えない小さな要素で世界が組み立てられていると仮定すると,簡単な計算で実験と比較できる答えが出てくる」という統計力学の面白さが凝縮された話だと思う*1. さて,そうしたことがわかったのは,もう80年も前である.しかし,そこから先の「うんと低い温度で長い長い時間がたったときに一体なにが起こるのか」は,実験家にとっても理論家にとっても難問だった.そして,その探究の道は統計力学という楽園からの旅立ちでもあったのだ*2. 相転移の発見 まず,実験のほうである.低い温度で,何日という単位で観測すると,じわじわと熱が放出されることは19
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