ブックマーク / ibaibabaibai-h.hatenablog.com (15)

  • はしか物語(3)【改訂版】 当たり年・外れ年・カオス - ibaibabaibaiのサイエンスブログ

    最初に戻って,麻疹の流行を非線形力学系の視点から眺める.ここに書いたようなことはいろいろな伝染病にあてはまる可能性があるが,(1)感染力が強く,(2)感染して症状の出ない人がほとんどおらず,(3)多くの人が比較的すみやかに回復し,(4)回復後は相当の期間にわたって強い免疫が保たれる,といった性質が,麻疹を特に興味深いものにしている. 麻疹のダイナミクス再び 最初の回では患者の数の変動をあらわす確率モデルの例を考えた.伝染病が「自滅」しては再生する様子を示すにはよいが,実際の麻疹のモデルと考えると,いろいろ問題がある. まず,ロンドンのような大きな都市では,麻疹は毎年流行するので,流行の周期は1年に固定されていることになる.大きい都市での変動は,最初の回で青い線で書いたグラフに相当するが,モデルでは流行の周期は都市の大きさ(あるいは新しく出生して入れ替わる数)によって連続的に変わるので,明ら

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    ystt 2016/08/10
    「実際のデータがカオス解なのか,単に安定な周期解(リミット・サイクル)に雑音が乗ったものを見ているのか,見分けるのは簡単ではない.」
  • (内容移動) - ibaibabaibaiのサイエンスブログ

    直前の回に内容を移動してまとめ(1+2)としました. ibaibabaibai-h.hatenablog.com

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    ystt 2016/08/05
  • はしか物語(1+2) 病気の振動と絶滅,都市の誕生 - ibaibabaibaiのサイエンスブログ

    今回のシリーズは麻疹(はしか)の話. 修士課程で氷の研究をしたあと,博士課程のはじめくらいに,伝染病のシミュレーションを格子の上で走らせて遊んでいたことがある.和文論文をひとつ書いたのだが,いま読むと何をやっているのかよくわからない内容なので,引用するのはやめておく.セル・オートマトンとかepidemic processとかが流行っていたころで,「物理」のセンスとそうでないものの間でなにか模索していたのだと思う. それから10年以上たって,自分が成人麻疹に罹ってしまい,危ないところだった.2015年で国内由来のはしかは3年連続でゼロになり「排除宣言」がされた由で,輸入される麻疹はあるにしても,発症数は激減している.いまや成人麻疹は貴重な体験かもしれないので,最後の回はその話を書くことにしよう. (1+2),3【改訂版】,(4+5)の全3回にまとめ直しました. 振動したり絶滅したり 伝染病の

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    ystt 2016/08/02
  • アイス・イレブンの秘密(2) 72K相転移の発見 - ibaibabaibaiのサイエンスブログ

    ここまでの話 前回は,氷の中の水素原子(正確には水素イオン=プロトン)がice ruleという制約条件の範囲でランダムに動いていることを説明した.また,それから順列組み合わせの式で求めたエントロピ―の計算が温度計や魔法瓶を使った実験とぴったり合う,という話をした.「目に見えない小さな要素で世界が組み立てられていると仮定すると,簡単な計算で実験と比較できる答えが出てくる」という統計力学の面白さが凝縮された話だと思う*1. さて,そうしたことがわかったのは,もう80年も前である.しかし,そこから先の「うんと低い温度で長い長い時間がたったときに一体なにが起こるのか」は,実験家にとっても理論家にとっても難問だった.そして,その探究の道は統計力学という楽園からの旅立ちでもあったのだ*2. 相転移の発見 まず,実験のほうである.低い温度で,何日という単位で観測すると,じわじわと熱が放出されることは19

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    ystt 2016/05/24
  • アイス・イレブンの秘密(1) まず普通の氷について熱く語ろう - ibaibabaibaiのサイエンスブログ

    自分の修論は氷の誘電率を統計力学で計算する話だった.その研究はうまく行かなかったが,もとになった話はなかなか面白く,その後も発展しているので,2回のシリーズで紹介したい.今回はまず80年前にはじまる基の話を説明し,次回はそれから現代までの探究を扱う.今回の分は「ベイズ統計と統計物理」という小冊子で「統計物理の典型的問題」として説明したものと重なるが,気持ちを新たにしてできるだけ分かりやすく書いてみた. 「氷」ってどんなもの? 「水の固体を氷という」のは誰でも知っているが,その中身はどうなっているのだろうか.「水分子が規則的に並んで結晶になっている」には違いないが,実はかなり面白い様子になっている. まずは図を見てもらいたい.白いのが酸素原子で,黒いのが水素原子である. もっと詳しく見たければ,たとえばこのリンク先を見て頂きたい(当は立体模型を見るのが一番である).Hexagonal i

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    ystt 2016/05/24
  • 「なぜ雌と雄があるか」をめぐる問題のまとめ - ibaibabaibaiのサイエンスブログ

    「配偶子の対称性の破れ」だけが「なぜ雌と雄があるか」の生物学だと思われるとバランスを欠くので,もう少し全体像について書いておくことにする. こんな受験勉強は嫌だ 前回のブログを書くために検索していたら,こんなのをみつけた. center.miggy.jp 生物で受験したことがないのだが,うむむと思った.授業や教科書では,後で述べるようなことが説明されているのかもしれないが,ここだけ聞くとちょっと勘弁である.「アオミドロ」と「ネンジュモ」と「クラミドモナス」についての細かな事実を覚えさせられたら,みどろが沼から念仏しながら坊さんが出てくる夢をみそうな気がする. まあ,いろいろ過ぎ去ったあとの眼からみると,暗記モノというのは妙に懐かしいものでもある.内田百閒は酒席で芸をやらされそうになると,直立不動でマレー半島の産物を連ねた口上を演じたそうだ.自分も片づけをしていると「クリボイログ!クリボイロ

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    ystt 2016/02/28
  • 卵子と精子の対称性の自発的破れ - 性差のはじまりを考える - ibaibabaibaiのサイエンスブログ

    「性をめぐる生物学の理論」について,特論(この回)と一般的な話(次回)の2回に分けて書く.自分が大学院生の頃は「社会生物学」とか「進化とゲーム理論」という言葉が新鮮な響きを持っていた時代で,そういう話題を普通の教養の一部として耳にする機会があったが,いまはどうだろう.そもそも生物学に,こういう感じの「理論」があることを知らない人も結構いるのかもしれない.一方で,このブログには職の生態学の読者も多そうなので,恥ずかしい気もするが,自分の中ではそれなりの重みのある話題なので,あえて取り上げてみることにした. 雌と雄の違いを突き詰めると 雌と雄はどこが違うのか.種によっていろいろな性差があるが,哺乳類にこだわらずに広く考えると,生物として基的なのは「雌は卵子を作るが,雄は精子を作る」という違いになる. では,卵子と精子はどこが違うのか.基的には,ひとつの個体から生まれる数が 少なくてデカい

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    ystt 2016/02/15
    同形配偶子から「卵子」と「精子」という非対称性が生じる過程を簡単ながら本質を捉えたモデルで再現。面白い。
  • 利己的な毒キノコ - ibaibabaibaiのサイエンスブログ

    生物の話もいろいろあるが「群淘汰は起こりにくい」という原理は知っておいて損はないと思う.これによって,ずいぶん多くの疑わしい説明から逃れることができる. 具体例として猛毒キノコを考えてみよう.毒で受動的に身を守ることの問題点は,毒が廻ったころには,キノコはべられてしまってあとかたもなくなっている,ということである.毒キノコでいちばん危ないのは,環状ペプチドを毒性物質として持つタイプのものだが,この場合には,初期症状のあといったん症状が治まる.すこし間隔をあけて強烈な肝障害が発現するが,べた動物が斃れたころには,べられたキノコは思い出の中にしか存在しないことになる.それでは毒はいったい何の役に立つのか. 夕にキノコが出たら,この話を振ってみるといい.「事中に毒キノコの話をするな」などと怒り出す無粋な相手でなければ,おそらくは次のような説明が帰ってくる. べられたキノコは助からない

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    ystt 2016/01/25
  • ある日海馬が故障した - 一過性全健忘(TGA)体験記 - ibaibabaibaiのサイエンスブログ

    だいぶ固い話題が続いたので,気分を変えて.3年ちょっと前に経験した奇妙な出来事についての報告を書くことにする.簡単にいうと,ある日突然海馬が故障して記憶にまったく書きこみができなくなり,数時間で治った.という話である.途中から科学者魂というか,何としてでも画像を手に入れてやる,みたいなモードになるのだが,さてその結果はどうなったか.症状のほうはそのまま回復して,その後再発もしていないので,心配せずに読んでいただきたい.あと,文中にも出てくるが,筆者は医療関係者でも脳の専門家でもないので念のため. 「これで5回目だと思う」 その日は10月の土曜日で,午後は自宅で科研費の書類を作っていた.それにも飽きて,いつものようにバスで最寄り駅まで行き,ジムに入った.着替えて,軽い筋トレをはじめたが,途中からなにか考えがうまく回らなくなって,ジムの中でうろうろしていたような気がする. そのあとしばらくたっ

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    ystt 2016/01/21
  • 光の波(下) ― きれいな光には毒がある - ibaibabaibaiのサイエンスブログ

    発端となったカメラの絞り値の話はかなり雰囲気も違うので,後日掲載ということで,光学編はこれでひとまず終わりです. 日常の中で光が波だと気づかないのはなぜ? 前回触れたような面白い現象がいろいろあるのに.ふだん光が波であることをあまり意識しないのはなぜだろうか.ひとつの理由としては単に気付かなかったり,見過ごしたり,ということがある.前回の光の波(上)でちょっとだけ触れた「指の間を狭めたときに見えるしましま」 *1 などはその例だろう. また,今回は説明しなかったが,油膜やシャボン玉の膜に色が見えるのも実は光が波である証拠である.この場合,現象自体は誰でも知っていても,知らないとそういう風には考えないわけだ. 「ポアソンの斑点」を日ごろの生活で目にしている人はいないだろう*2.そのひとつの理由としては,遮蔽物がかなり完璧な円板または球である必要があることが挙げられる.かなり微妙な現象なので,

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    ystt 2016/01/12
  • 光の波(上) ― 波から「光線」ができる仕組み,波だから起きる謎の現象 - ibaibabaibaiのサイエンスブログ

    光シリーズの実質最終回ですが,なんか伸びちゃったので上下に分割です. 光と電波は仲間 ときどき思うのだが「光も電波もX線も同じ種類のもの」(電磁波)だというのはどのくらい一般的な知識なのだろうか.日に住んでいる人の8~9割が普通にそう思っている,という気がする一方で,いや違うのかも,という気もする.実際には,こういうのは「知っている」「知らない」の2択ではなくて「そう言われたらそうかもしれないが,割とどうでもいいと思っている」人たちが多数派なのかもしれない. 自分はというと,小学生のころは科学少年だったから,下のリンクにあるような図がお気に入りで,しょっちゅう眺めては悦に入っていた.こういう図をみると,電磁波の世界は隅々までわかっていて使われているという印象を受ける.しかし,最近よく聞く「テラヘルツ波」はまさにこの図のなかの未探査領域に属する.光と波長の短い電波の中間地帯に十分使いこなせ

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    ystt 2016/01/07
  • 2×2行列でレンズ系を解く - ibaibabaibaiのサイエンスブログ

    今回はレンズ4部作(?)のうちで,いちばん数式の多い回かも.今後こういうのがずっと続く訳ではなくて,数式レスのネタも各種予定しているのでよろしく. ガウスとレンズのつながり 数学者のガウスとレンズの繋がりというと,カメラが好きな人は「ガウス型のレンズ」を思い浮かべるのではないか.しかし,実はガウスとガウス型のレンズの繋がりは存外薄いようだ.ガウス型の特徴である「前後対称にレンズを並べる」というのもガウスの考案ではないらしい. それでは,ガウスとレンズはあんまり関係ないか,というと,それは全然違う.レンズの集まりについて,いちばん簡単な近似で議論することを「近軸理論」という.「レンズの中心軸に近い光線(近軸光線)を議論する理論」という意味だが,他の分野の用語でいえば,線形近似(1次近似)である.三角関数が好きな人なら「中心軸との角度をラジアンで測ったものをとしたときに,となる範囲」を扱う理論

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    ystt 2016/01/03
  • 光学の初歩はけっこう面白い - ibaibabaibaiのサイエンスブログ

    なんでこんなことになったのだぁ これから数回続けて光学ネタになるが,レンズブログになったわけではないし,特別にこの方面が得意というわけでもない.もとはといえば,友人にカメラの絞りと被写界深度の関係について聞かれたのが発端である.「せっかく図をかくのだから裏ブログに載せるよ」というわで,2,3日でさくっと済ます予定だった. しかし・・ 良い意味で,はまってしまったのだった.「レンズの公式ってどうやって出すんだっけ? そういやファインマン物理に秀逸な説明あったよな」とか「<レンズを沢山組み合わせても1次近似(近軸光線)の範囲では1枚のレンズに等価になる>ってガウスが証明したのか~.で,どうやるの?」とか言ってるうちに,みるみる拡散して,もとの質問はもはや何だかわからんという状態に. いや,やっぱり光って面白いよね.ゾーンプレートとかアラゴの斑点(ポアソンの斑点)のような光の波の性質が絡むアダル

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    ystt 2015/12/25
    「可視光でなくX線用のは Kinoform というらしい.」/ X線用に限らず位相型回折光学素子全般のことをキノフォームと呼ぶ場合の方が多いかも。
  • 動的平衡なんて怖くない - ibaibabaibaiのサイエンスブログ

    動的平衡 福岡伸一の「動的平衡」というが話題になったのは,もうだいぶ前のような気がする. 「あれ~なんかおかしいなあ,動的平衡って別に生物に限らない筈だよねー」とか思ってるうちにブームになり,「文句いおうかどうしようか」と空気を読んでいるうちに話題から去ってしまった,という方も多いのではないだろうか. 「動的平衡」をウィキペディアで見ると,普通の説明を読むことができるが,べつだん生物に限らないことは明らかである.動的平衡 - Wikipedia 統計物理の観点からすると,動的平衡といっても,熱平衡状態やその近傍で見られるものと「非平衡」のものがあるが,前者は釣り合いの状態にある化学反応ならいつでもみられる.たとえば,生物実験で使う緩衝液の中でも起きているが,そのことから「緩衝液は生きている」などと考える生物学者はいないだろう. 非平衡の動的平衡も生物絡みとは限らないが,「非平衡のシステム

    動的平衡なんて怖くない - ibaibabaibaiのサイエンスブログ
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    ystt 2015/11/27
    「『動的平衡によって生物が特徴付けられる』という考えは,『台風や交通渋滞も生物とみなす』という過激な主張をしないかぎり,成り立たない.」
  • プリオンなんて嘘だと思ってた - ibaibabaibaiのサイエンスブログ

    はじめはプリオンなんて信じなかった. だって話が出来過ぎではないか.たんぱく質の1次元配列は同じでも,その折りたたみの形状が複数ある.みんながAという折りたたみ方をしているときに,それよりちょっとだけ安定なBという形状のものを入れると,それが自己触媒的に伝わっていき,とうとう全部がBになってしまう. これだけで,統計物理だの非線形科学だのに興味を持っている人間にはツボとしかいいようがない.たとえば,結晶を作るときに「種」を入れると,それまで「偽りの安定状態」にあった過飽和溶液から急速に固体が出現する.こうした正のフィードバック現象は,こうした学問に携わる者の心の底に棲みついている.それが突然思ってもみなかったふうに登場したのである. しかも,プリオンには「ストレイン」という系統のようなものがいくつもあって,たとえば系統Bに感染すると全部が系統Bに,系統Cに感染すると全部が系統C,という風に

    プリオンなんて嘘だと思ってた - ibaibabaibaiのサイエンスブログ
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    ystt 2015/11/11
    (おまけ)が大変面白い。
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