夜のお店に行きますと、独特な名前(源氏名)が付けられていて、不思議な感覚にとらわれた記憶があります。平安時代の遊女たちの名前を見ますと、「観音」という女性がいますが、当時の庶民には仏教に関係するものが多いのです。ここからは、遊女たちの名前に特殊なものがあるとは言えません。 歴史というのは不思議で、どうしても現在の習俗事象にひっぱられて資料を見てしまうのですが、よく調べると異なる事実が見えてくる。まさに歴史研究の醍醐味ではないでしょうか。 研究史上、遊女は長らく「特殊な」存在として扱われてきた。その根拠の一つとされてきたのが、遊女の名前である。 柳田国男は、遊女をサンカと同系統の漂泊民であるとし、常民とは区別した。初期には遊女を「ジプシーの片われ」として異民族と位置付けていたこともある。柳田は遊女の特殊性の一つとして祈祷・巫女の業を挙げ、遊女たちには「観音小観音文殊御前孔雀など仏教に因ちなめ

