はじめに 私は、東京大学に教員として籍を置き、専門論文以外の一般書を上梓しています。研究以外のこうした活動は「副業(または趣味)」ですから、皆さまからしばしば叱責いただきます。機会あるたびに私は立ち位置を明確にしてきましたが、その過程で、類似した叱責(ときに励まし)を繰り返しいただくことに気付きまして、本ページにまとめることにしました。 まず申し上げるべきことは、私は研究中心の生活を大切にしていることです。なぜなら、私は 1.なにより研究が好きである 2.大学に雇用されている立場である 3.国家から研究費を委託され、科学を遂行(代行)している立場である からです。 こうした理由から、私は 1.テレビやラジオへの出演や企画・監修は限られたものだけにしています 2.本や寄稿の大半は基本的に自分では書いておりません (ほとんどの場合、講義・対談・取材を文章化したものです) なぜなら、できるだけ多
なぜ、NSABBは論文の一部削除を勧告したのか Nature 2012年2月9日号 vol. 482 (156–157) | doi:10.1038/482156a Published online 31 January 2012 H5N1インフルエンザウイルスを哺乳類の間で感染できるよう適応させた研究に関する2本の論文に対し、米国のバイオセキュリティーに関する国家科学諮問委員会(NSABB)が、手順などいくつかの詳細な情報を差し控えて公表すべきだとする勧告を出した1。1つは、ウィスコンシン大学マディソン校(米国)および東京大学医科学研究所(東京都港区)に所属する河岡義裕(かわおかよしひろ)の研究チームの論文で、赤血球凝集素(HA)の型の1つであるH5と、過去にパンデミックを起こしたヒトH1N1ウイルス由来の遺伝子群とを組み合わせたウイルスを作製したところ、ウイルスが哺乳類であるフェレッ
(2/6 補足書きました→「放置系ブラック研究室で楽しく生きるにあたって」の補足 - 糞ネット弁慶) 修士論文を提出し,発表を済ませた.また,これをもって大学院及び研究室に関する全ての行事が終了した(「教授が論文書けってうるさいから春休み潰れるわ〜まじないわ〜」などという学生とは違う).というわけなので三年間の研究室生活について振り返ってみる. 放置系ブラック研究室とは そもそも我が研究室は非常に放任主義の放置系ブラック研究室であった.いくつか例を挙げると 論文紹介や輪講などない M2になってから7回程度しかゼミをやった記憶が無い 研究テーマが上から降ってくることがない 教授が卒論・修論のテーマを提出の一ヶ月前まで把握していない 研究しない 論文(書かない|書けない) (研究会|全国大会|諸々)(出ない|出さない|出せない) そもそも何がいつあって締切りがいつとか知らない 学生が学会に何一
10月1 法学者にみられる偏向 カテゴリ:福島原発事故関連文化論 本ブログを始めた理由は東日本大震災とそれに伴う福島原発事故に対する我が国の対応に対して危機感を感じたからである。当初は福島原発事故関連の記事が中心であったが、最近は専ら科学教育関連の記事に集中している。重点がシフトしたのは、福島原発事故がある程度収束しつつあることもあるが、自分の発信に無力感を持ちつつあることも大きな理由と言える。ところが、本日他人のブログに掲載された福島原発事故関連の記事を読んで強い憤りを感じた。そして、その記事に対する激越なコメント文を書いてみた(文末の「付録」を参照されたい)。しかしながら、コメントの内容はその記事を全否定するものであり、そのためそのコメント文が当該ブログ主に採用されることは期待できないと判断するに至った。私の憤りの行き場が失われた訳だが、当該ブログ主が法学者であることから、当該記事の弱
10月18 科学社会学と反科学主義 カテゴリ:福島原発事故関連文化論 福島原発事故を契機として反科学主義的傾向が強まっていることについてはこれまで何度か議論した(例えば、この記事)。また、平川秀幸氏(大阪大学コミュニケーションデザイン・センター准教授)を含む一部の科学社会学者に見られる反科学主義的傾向についても批判した。福島原発事故に伴う日本国土の放射能汚染問題は極めて重大な問題であるが、いわゆる風評被害が問題をさらに難しくしている。放射能汚染問題に正しく対処する上で反科学主義的思想を持った人達による煽動が大きな障害となりつつある現状を考えると、反科学主義に対する理論的後ろ盾を提供している一部の科学社会学者の思想の根底にあるものを抉り出し、それを批判することは喫緊の課題と言えよう。 科学社会学は社会における科学の有り様を研究する分野としてのメタ科学である。科学的法則は価値中立的であるので、
ソーカル事件(ソーカルじけん、英: Sokal affair)とは、ニューヨーク大学物理学教授だったアラン・ソーカル[注釈 1]が、1995年[注釈 2]に現代思想系の学術誌に論文を掲載したことに端を発する事件をさす[1]。 ソーカルはポストモダン思想家の文体をまねて科学用語と数式をちりばめた「無内容な論文」を作成し、これをポストモダン思想専門の学術誌に送ったところ、そのまま受理・掲載された。その後ソーカルは論文がでたらめな内容だったことを暴露し、それを見抜けず掲載した専門家を指弾するとともに、一部のポストモダン思想家が自分の疑似論文と同様に、数学・科学用語を権威付けとしてでたらめに使用していると主張した。 論文の発表につづいてソーカルは、フランスのポストモダン思想家を厳しく批判する著作を発表し、社会的に大きな注目を浴びた。 1994年、ニューヨーク大学物理学教授だったアラン・ソーカルは、
Kazuhiko Kume @ Nagoya City University メモや意見をあれこれと・・・ (コメント、TB歓迎です。反映までは、しばらくお待ちください) 最近、「自分たちは子どもを産めますか?」という質問を、福島の若い人から尋ねられたらという話題がTwitterで流れ、こんなやり取りがありました。 大阪大学の菊池誠先生 https://twitter.com/#!/kikumaco/status/177411750369558528 「わたしたちは子どもを産めますか」と福島の高校生に聞かれたら、 心配ないと答えるのは大人としてのつとめでしょう。 「そんな心配をさせる原発が悪い」とか言ってる暇があるなら、 まずは子どもを絶望から救え。原発非難はそのあとだ これに対して、群馬大学の早川由紀夫先生 https://twitter.com/#!/HayakawaYukio/sta
Japan's post-Fukushima earthquake health woes go beyond radiation effects 2012年 3月7日 Katherine Harmon Natureの記事ですが、論文ではなく米国の科学雑誌「Scientific American」の記事を紹介したものです。 記事では、日本での福島原発事故の現状や政府の対応、住民の置かれている状況を紹介し、米国、日本のいくつかの分野の専門家の見解を紹介しています。今のところ英文記事のみのようなので、専門家の見解の部分を要約してみました。 放射線の影響について 「1年が経ち、公衆衛生の専門家達の意見は、放射線への恐れは大げさだったということで一致している」としています。 Thomas McKone(カリフォルニア大学バークレー校公衆衛生大学院)は「(福島原発からの放射線による)予想される死者は
トマトジュースが売れに売れてる、という新聞の記事がありました。私の周りでは、とんとそのような話は聞かないのですが、お店によっては品薄なところもあるようです。 読売新聞 トマトジュース売れすぎ…脂肪燃焼効果の論文で トマトの成分に脂肪燃焼効果があるとの論文が今月10日に発表・報道された後、各地のスーパーでトマトジュースが爆発的に売れ、品薄状態に陥っている。 消費者がダイエットや健康に良いとされる食品に殺到する「フードファディズム」と呼ばれる現象だ。今回はテレビ番組が発端だった過去の多くのケースと様相が異なるが、スーパーやメーカーの担当者からは「またも繰り返されたか」との声が上がっている。 きっかけは、「トマトから、中性脂肪を減らす物質が発見された」という京都大学からの発表(これについては、先日このブログでも取り上げました)。発表された論文では「13-oxo-ODA」という物質が、マウスで「中
てるてる @IWKRterter 「はやぶさ」が持ち帰った小惑星「イトカワ」の微粒子分析結果についての雑感 石渡 明(東北大学東北アジア研究センター)http://t.co/VXlQRE7h たしかに、って感じですよね… 「はやぶさ」はサイエンスの中身よりも国威発揚の方が優先されてる感じがする。 てるてる @IWKRterter さっきのはやぶさツイが思いの外RTしていただいたので追加を言うと、国威発揚してもいいと思うし、往復するだけでも宇宙開発技術にプラスになったと思う。でも、世間の映画化までして持て囃す風潮にサイエンスの方は同調して欲しくないからああいう冷静な分析がもっと出てくればいいな、と思ったり。
2012年01月28日 03:46 カテゴリ科学と暮らし まだまだわからない低レベル放射線の健康リスク Posted by science_q No Comments No Trackbacks Tweet 1945年 に広島と長崎に投下された原子爆弾は、被爆放射線量と健康リスクに関する、世界的に類を見ない膨大な疫学データを提供しました。その結果、放射線量と健康 リスクは直線的に比例し、健康リスクがゼロになる放射線量の閾値は存在しないというのがこれまでの通説になっていました。ところが、独ヘルムホルツ環境保 健研究センターのTeresa Neumaier氏らは、全米科学アカデミー紀要1月10日号(PNAS, 109:443-448, 2012) の中で、その通説を覆す結果が得られたと発表しました。低線量と高線量で放射線に対する細胞の応答が異なることを発見したというのです。福島原発の事故以来、
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