本書は、故宇沢弘文先生の研究生活の後半40年にわたる代表的な論文をひとつの形にまとめたものである。宇沢先生のノートパソコンに入っていた2千以上もの論稿を、コロンビア大学のジョセフ・スティグリッツ教授、京都大学の松下和夫名誉教授、国連大学の竹本和彦所長、帝京大学の小島寛之教授など、多くの関係者の協力を得て編集したという。 「知の巨人」宇沢先生の業績と、今日のグローバル社会における意義を正しく理解することは容易ではない。宇沢先生の活動は、数学の研究者から転じて数理経済学で業績を上げ、後に経済学を実社会の幅広い問題解決に適用することに注力し、更にその中心に「人間」を置いたことで、思想的・哲学的な大きな広がりを持っている。本書の目次を見ても、「自動車」「環境」「医療」「教育」「農村」など、その研究対象は極めて広範囲に及んでいる。 宇沢経済学の根底にある人間尊重 「日本人で最もノーベル経済学賞に近い