途上国研究の先端的内容を平易に解説し、社会科学的な面から外国理解の一助となることをめざします。 月に2回を目安に新しい記事を配信します。 第74回 チーフは救世主? コンゴ民主共和国での徴税実験と歳入への効果 / 工藤 友哉 公共財の供給など、国家がその機能を適切に果たすためには歳入を増やすことが不可欠だ。しかし、税収がGDPの10%に満たない低所得国は多い(Pomeranz and Vila-Belda, 2019)。この一因として、国家が課税できる物や取引について十分な情報をもっていないことが考えられる。では、国家よりも詳細な情報をもつ第三者に税の徴収を依頼したらどうだろうか。本論文の著者らは、コンゴ民主共和国の州政府と協力した経済実験を行い、チーフとよばれる地域の指導者(詳細は後述)に徴税業務を委託した場合の歳入への効果を分析する。 2023/10/25 第73回 家庭から子どもに伝
ジェンダー格差-実証経済学は何を語るか (中公新書 2768) 作者:牧野 百恵 中央公論新社 Amazon 「ジェンダー格差」と「実証経済学」の組み合わせに惹かれたこと、そして中公新書というレーベルの信頼度から、発売日直後に購入。 他にも読んでいる本はあるんだけれど発売直後の本は早いとこ書評を書いたほうが宣伝にもなるものなので、読み終わった直後であるが簡単に感想を書いておく。 本書はまさに副題通りの「経済学」の本であり、著者も序章で「私はジェンダーの専門家ではありません」と明言している(p.ⅳ)。また、経済学は価値判断を下す学問ではなく、あくまで現実を分析して事実を明らかにするためのツールであるということが本書では繰り返し指摘されている。これらの点は、本書の長所であると同時に弱点にもなっているように思えた。 本書の長所としては、近年の人文学的なジェンダー論者やフェミニストが「資本主義的」
原題は「キャリアと家族:平等を目指す女性の1世紀にわたる旅」となっており、様々なデータを駆使しアメリカ女性を5つに分類しコーホート分析しています。 分類は厳密で、各世代を一般化しうる基準が示されており、例えば「マリッジバー」により既婚女性が合法的に解雇されていた、などのエビデンスが示されます。データのみならず、各世代を代表する傑出した女性の事例や、テレビドラマで描かれた時代を象徴する女性を例にあげることで、人間味のある記述になっています。 謝辞を読むと、この工夫が編集者の助言に基づくものだとわかります。著者はアメリカ経済学会長や経済史学会長を務めた大御所ですが、こうした「えらい先生」の著作でも丸投げにせず「読みやすさ」を求める編集者のプロ意識を感じる。 ピルにより、出産時期を遅らせ、またコントロールできるようになったことが、女性の仕事とキャリア形成にいかに影響を与えたか、という記述も興味深
はじめてのフェミニズム (ちくまプリマー新書) 作者:デボラ・キャメロン,向井和美 筑摩書房 Amazon 『福祉国家』、『ポピュリズム』、『移民』、『法哲学』に引き続きオックスフォードのVery Short Introduction シリーズの邦訳書を紹介するシリーズ第五弾……ではないのだが、同じように英語圏の入門書の邦訳なのでこの流れで紹介。また、今月に発売したばかりの本である*1。 本書の「はじめに」ではフェミニズムの定義の問題について触れられている。 …フェミニズムへの向き合いかたは、なにを「フェミニズム」とするかによって変わってくるということなのです。だれかが「フェミニズム」という言葉を使うとき、意味しているのは次のどれか、あるいは全部かもしれません。 ・理念としてのフェミニズム。かつてマリー・シアー[アメリカの作家、フェミニズム活動家]は「女性は人であるという根源的な考えかた」
イギリスで始まり世界中で多くの方が取り組んでいるBaby-Led Weaning(BLW、赤ちゃん主導の離乳)。 日本ではまだまだ情報が少なく、どう取り入れたらいいのか困ってしまっている方もいるのではないでしょうか。 今回は、BLWに関する基礎知識と実践の仕方についてご紹介します。 まずは基礎知識。この項目は実践方法を知りたい方は飛ばしていただいてもかまいません。 BLWってイギリスから来た手づかみ食べで固形食だけでやる方法でしょ?なんか海外のやり方をそのまま日本でやっていいのか不安だし、いきなり固形食とか消化の問題とか窒息とか危険じゃないの?? 多くの方は初めてBLWのことを聞いたとき、そのように感じたのではないでしょうか。 現在主流となっているやり方(従来法)では、おかゆから始めて一食ずつ、ひとさじずつ与えていく、とても慎重にみえる方法であるために少々乱暴な考えのように感じてしまうかも
※このページは、やや専門家向けの話になっています。医療者やマスコミの人など詳しく知りたい人向けです。 古来より、妊娠出産は、人生の最高の瞬間であるとともに、女性の命を奪うこともあるリスキーなイベントでもありました。現代であっても、安全な人工妊娠中絶ができることは、安全な妊娠出産ができることと同じくらい、女性の健康を守るために大事なこととされています。 もちろん、女性/男性ともに、中絶という選択肢をとらなくて良いように、普段から確実な避妊をすることをお願いします。日本で使える確実な避妊法は、ピル、または、ミレーナです。ちなみに、世界では他にも様々な避妊方法があります。いろんな避妊法が、もっと安く、もっとアクセスしやすくなって欲しいと思っています。 週数による人工妊娠中絶方法の違い 人工妊娠中絶は、週数によってやり方が変わります。(ここでは日本での話です) 初期の妊娠12週未満は日帰りの手術
BLW(Baby Led Weaning)とは何か イギリスの助産師であり保健師であるジル・ラプレイ氏によって提唱された離乳法です。 2008年にBLWの著書を出版し、現在までで20ヵ国以上に翻訳/出版されています。日本でも2019年にようやく翻訳書が出版され、それ以来、急速に注目されている離乳法となっています。 「自分で食べる!」が食べる力を育てる:赤ちゃん主導の離乳(BLW)入門 Gill Rapley 小児科医、看護師、歯科医、保健師、助産師、栄養士、保育士……子供の成長をサポートするプロがいま熱く注目する離乳法――BLW(baby-led weaning 赤ちゃん主導の離乳)のすべてをわかりやすく解説。 Amazon 従来の離乳食は食物をピューレ上にしてスプーンにのせ、赤ちゃんに食べさせる(Spoon feeding)アプローチを取ります。いわば親が主導する離乳食です。 一方、BL
母乳の量がいつ落ち着くかご存知ですか? または赤ちゃんが大きくなり活発になるにしたがって、赤ちゃんの授乳頻度や時間がどのように変化するかご存知ですか? 1か月目以降の授乳について、このガイドをご覧ください。 おめでとうございます!母乳育児の最初の大変な1か月をやり遂げました。母乳は完全に成乳となり1、母乳量も落ち着き始め、母乳が漏れ出すことも少なくなってきていると思います。でも、心配なさらないでください。母乳量が減ったわけではありません。おっぱいがより効率的に母乳を作り、溜めておけるようになってきただけです2。6週間目には、初めて歯ぐきをのぞかせる素晴らしい笑顔を見られるようになり、2か月目までには、授乳を500~600回経験することになります。おそらくラッチオン(くわえかた)の問題は解決しており、今は授乳を維持してその便利さと持続的な健康面でのメリットを実感するときです。 授乳頻度が減る
リンク おきく's第3波フェミニズム ナンシー・フレイザー「フェミニズムはどうして資本主義の侍女となってしまったのか」 | おきく's第3波フェミニズム アメリカの社会主義フェミニスト、ナンシー・フレイザーの文章を訳したものを紹介します。 これは「The Guardian」のサイトに寄稿されているもの... 戦後の国家管理型資本主義は新しい形式の資本主義−−「組織されない」、グローバルな、ネオリベラリズム−−に道を譲った。第二波フェミニズムは前者への批判として現れたが、後者の侍女になってしまった。 女性解放のための運動は自由市場の社会を築くためのネオリベラルな努力との危険な結びつきに巻き込まれてしまったのではないかとわたしは恐れている。 かつては「ケア」や相互依存の価値を発見した世界観がいまや、個人の達成や能力主義を奨励する。 フェミニズムの両義性 女性解放運動は同時に異なるふたつの可能な
英BBC×米ケーブルチャンネルAMCの医療ドラマ『産婦人科医アダムの赤裸々日記(原題・This Is Going To Hurt)』が、いよいよ4月6日(水)から日本でも放送スタートになる。英人気俳優のベン・ウィショーが産婦人科医を演じることで放送前から大変な話題を呼んでいるが、今回は一足早くこのドラマの見どころを紹介しよう。 『産婦人科医アダムの赤裸々日記』は、アダム・ケイ原作のノンフィクション「すこし痛みますよ~ジュニアドクターの赤裸々すぎる日記」をもとに、アダム・ケイの制作会社「テリブル・プロダクションズ」と『ランドスケーパーズ 秘密の庭』などを手がけた「シスター」の共同製作で映像化したもの。全7話。現在はコメディアン・作家として活躍するアダム・ケイが、2004年から2010年にかけて産婦人科医のジュニアドクターとして働いた経験を日記形式で綴った回想録は全世界で250万部超のベストセ
旧優生保護法強制不妊手術被害者の裁判で証拠提出した論文の著者サム・ローランズさん First Trimester Abortion in Japan - BSACP Sam Rawlands(サム・ローランズ)さんが、日本の中絶薬導入に関してエッセーを書いているのを発見しました。私の英文ブログから得た情報も使われています。 仮訳して共有しますね 日本における妊娠第一期の中絶 2022年5月12日 1988年に中国とフランスで利用可能になったミフェプリストンが、日本にやってくるかもしれない兆しがあります。ミフェプリストンは現在82カ国で早期の薬による中絶に使用することが承認されています(https://gynuity.org/resources/list-of-mifepristone-approvals )。30年以上にわたる臨床研究に基づいて、早期の薬による中絶に用いられるミフェプリスト
妊娠中絶関連のブックガイドです。順不同で。常に書きかけです。 パウロ六世 (1969)『フマーネ・ヴィテ(人間の生命):適切な産児の調整について』、神林宏和訳、中央出版社。ヴァチカンの公式見解です。入手難しいかもしれないからPDFでばらまきたいような気もするけど、だめだろうなあ。ネットに http://japan-lifeissues.net/writers/doc/hv/hv_01humanaevitae-ja1.html があるのですが、このページを運用している団体「聖母献身宣教会」がどういう団体であるか私はわかっていません。田中美津『いのちの女たち:とり乱しのウーマン・リブ論』(パンドラ、2010)。70年代の国内のウーマンリブ運動に強烈なインパクトを与えた1冊です。必読。キャロル・ギリガン (1986) 『もう一つの声』(川島書店)。女性にとっての中絶という体験を分析した非常に重要
むずかしい女性が変えてきた――あたらしいフェミニズム史 作者:ヘレン・ルイス みすず書房 Amazon 出版社による紹介は下記の通り。 女性が劣位に置かれている状況を変えてきた女性のなかには、品行方正ではない者がいた。危険な思想に傾く者も、暴力に訴える者さえもいた。 たとえばキャロライン・ノートン。19世紀に困難な離婚裁判を戦い抜いて貴重な前例をつくった人物だが、「女性は生まれながらにして男性に劣る」と書き残した。たとえばサフラジェットたち。女性の参政権獲得に欠かせない存在だったが、放火や爆破などのテロ行為に及ぶこともあった。たとえばマリー・ストープス。避妊の普及に尽力し多産に悩む多くの女性を救った彼女は、優生思想への関心を隠さなかった。 しかしだからといって、その功績をなかったことにしてはいけない。逆に功績があるからといって、問題をなかったことにしてはいけない。歴史は、長所も短所もある一
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