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ブックマーク / jtsutsui.hatenablog.com (11)

  • 『社会学はどこから来てどこへ行くのか』出版によせて - 社会学者の研究メモ

    今月(2018年11月)、四人の社会学者の対談集、『社会学はどこから来てどこへ行くのか』が出版された。私以外の三人は、社会学の世界に限らず高い認知度があって、どういったいきさつからか、そこに私も混ざっているのだが、いくばくか場違い感があるのは否めない。 社会学はどこから来てどこへ行くのか 作者: 岸政彦,北田暁大,筒井淳也,稲葉振一郎出版社/メーカー: 有斐閣発売日: 2018/11/14メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログ (1件) を見る 私はどちからといえば、他の三人と比べて制度としての社会学の世界に浸かっている度合いが強い。社会学会、家族社会学会、数理社会学会では面倒な≒重要な役を仰せつかっているし、大規模な調査プロジェクト(SSMやNFRJ)に参加しているし、そういったしがらみのなかで雑務に追われるのが日常だ。一日の仕事時間の1/4くらいは、広い意味では学会関係

    『社会学はどこから来てどこへ行くのか』出版によせて - 社会学者の研究メモ
  • 科学における不正と発見 - 社会学者の研究メモ

    「あの件」については何も意見とか書いてなかったのですが(たくさんの人がたくさんの興味深いことを書いてくれているので)、ひとつだけ気になったことがあります。 何かしらすごい科学的発見があって、その発見をした人が何らかの理由でその発見を露骨に不正な手続きで世に出して、その不正のゆえにその科学的発見が一定のあいだ認められなかった、という事例は、これまでどれくらいあるのかな、ということです。(「ないだろう」と思っているわけではなくて、事実としてそういうことがよくあるのかどうか知りたい、ということ。) 一部の科学哲学では「発見の文脈」と「正当化の文脈」を分けているので、この分け方を使うとすれば、発見においてはひらめきでも夢のお告げであっても、科学的に非難されることはあまりないでしょう。しかしその結果を正当化する文脈では、現在の科学コミュニティは(総体として)それなりに厳しいスタンスをとっています。

    科学における不正と発見 - 社会学者の研究メモ
  • 社会学方法論と社会調査論の関係 - 社会学者の研究メモ

    (長文かつ専門家向けであり、一部の人以外にとってはあまりおもしろくない記事なので、あらかじめご了承ください。) 教科書的な社会学方法論 教科書的な社会学方法論においては、主観主義的立場と客観主義的立場の分断について論じられることが多い。いくつかのテキストブックには、主観主義的立場の元祖はウェーバーであると書いてあり、それはウェーバーが「理解社会学」の方法として「行為の行為者にとっての意味を理解することが必要だ」と説いたことに根拠付けられている。これに対して客観主義的立場の元祖はデュルケムであり、それはデュルケムが個人の外に存在する社会的事実に注目せよ、と説いたことに由来する。 他方で、社会学の実証研究に従事している人たちは、多くの場合こういった区分をそもそも参照していないように思える。つまり社会学のテキストブックに書かれているような方法論と、現在実践されている、特に社会調査論に依拠した経験

    社会学方法論と社会調査論の関係 - 社会学者の研究メモ
    yuiseki
    yuiseki 2012/10/30
  • 反事実的状況のマクロシミュレーション - 社会学者の研究メモ

    (授業やら会議やらでバタバタ気味で、誤字などある可能性もありますが、とりあえずあげておきます。) 性別賃金格差の研究では、しばしば「男女の◯◯構成が同じだと仮定すれば賃金格差は△△だけ縮小する」といった、マクロレベルでの反事実的状況の想定が行われている。マイクロデータを使った研究では因果志向の推定モデル(回帰分析は一般にそうだが、ヘックマンのセレクションモデルや各種パネルモデルが典型だろう)が試みられるが、データの蓄積の面からも、マクロデータの活用方法が工夫されることへの要請は小さくないといえる。 利用の蓄積が多いのはブラインダー・ワハカ分解だろう*1。様々なところで解説がされているので詳しくは説明しないが、男女それぞれの賃金関数を 男性賃金=ΣβmXm+ε 女性賃金=ΣβfXf+ε とする。βmは個々の要因の男性における係数、Xmは要因の観察値である(女性についても同様)。この式を、差を

    反事実的状況のマクロシミュレーション - 社会学者の研究メモ
    yuiseki
    yuiseki 2012/06/28
  • 図(だけ)で説明する回帰分析 - 社会学者の研究メモ

    分かっているようで意外と分かっていないのが回帰分析です。回帰分析の考え方をできるだけ図だけで説明した資料を作りましたので、適宜ご参照ください。 「(ほぼ)図(だけ)で説明する回帰分析」(PDF) 主な内容は、以下のとおりです。 説明変数と撹乱項の相関の理解 予測値の信頼区間をプロットすることの重要性の理解 「変数をコントロールする」ということで曖昧に理解されている内容の理解

    図(だけ)で説明する回帰分析 - 社会学者の研究メモ
  • 説明と選抜:統計学における2つの「関心」 - 社会学者の研究メモ

    社会学者や経済学者にとって、統計学をベースにした計量分析とは、何かを因果的に説明する道具であるという側面がある。賃金を学歴で説明するというとき、それは他の条件が同じで学歴が変化したときの賃金の変化量を推定する、という意味である。 (記述的な分析手法を含めて)統計学を学ぶ人のほとんどは、この「説明(explanation)」のためにそれを学んでいるのだと考えられる。 しかし統計学には、それとは全く異なった目的が託されることもある。それは「選抜(selection)」である。統計学を選抜に使うというのは、それをアカデミックに活用している研究者からみても、実はあまり馴染みのない考え方である。というのも、あとで詳しく述べるが、選抜は学問的説明とは相容れない考え方だからだ。 しかし選抜は、実践家においては大いに意味がある考え方である。「限られた回数の耐久力テストの結果から、真に優れた個体を選抜する」

    説明と選抜:統計学における2つの「関心」 - 社会学者の研究メモ
  • (非計量さん向けの)統計学の話:バイアス編 - 社会学者の研究メモ

    (今回はですます調でいく。いや行きます。) まずは、私の後輩や知人たちが書いたです。↓ エスノメソドロジー―人びとの実践から学ぶ (ワードマップ) 作者: 前田泰樹,水川喜文,岡田光弘出版社/メーカー: 新曜社発売日: 2007/08/03メディア: 単行(ソフトカバー)購入: 6人 クリック: 1,065回この商品を含むブログ (99件) を見る このなかに、次のような文章があります。 どのような研究に対しても、その主張の妥当性を、そこで採用されている方法と無関係に論じることはできません。だから、「事例の数」やそこから得られる「一般性」を問う前にまず、ある研究が明らかにしようとしていることが、そもそも事例の数によって保証される種類のものなのかどうかということ自体を考えなくてはなりません。 このことは言ってみれば「当然」のことなのですが、研究者の間ではあまり考えぬかれていない重要な論点

    (非計量さん向けの)統計学の話:バイアス編 - 社会学者の研究メモ
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    yuiseki 2011/05/13
  • 社会学にとって理論とは何か - 社会学者の研究メモ

    「理論と実証」について考えるときに、しばしば忘れられてしまうのは、理論と実証以前に、その両者に意味を与えるもっと大事なことがある、ということです。それは「問題関心」です。そして多くの実証研究は、この問題関心から出発しています。階層研究であれは公平性、都市研究であればコミュニティの価値、などが一例になるでしょう。そういった(根的には日常の社会生活に根ざしている)問題関心があるからこそ、それに関わる問を立て、答えていくという研究活動が成立するわけです。ほとんどの実証研究はこの枠組みに沿って行われているはずです。(そうではないものはちょっと想像しにくい。) 要するに、研究は実証するために行うものではありません。理論を構築するために行うものでもありません。理論を実証するために行うものでもありません。特定の問題関心から発する問いに、説得力をもって答えるために行うものです。(だから、日常的なコミュニ

    社会学にとって理論とは何か - 社会学者の研究メモ
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    yuiseki 2010/05/23
  • ソーシャル・キャピタル論の考察(その一) - 社会学者の研究メモ

    ソーシャル・キャピタルの定義は人によって違うし、定義している人がじゃあ道理の通った整理をしているのかというと意外にそうじゃないので、ソーシャル・キャピタルという概念を有効に活用するにはどうしたらいいのかを考察してみよう。 まずP.ブルデューの定義。 Social capital is the aggregate of the actual or potential resources which are linked to possession of a durable network of more or less institutionalized relationships of mutual acquaintance and recognition --- or in other words, to membership in a group --- which provides

    ソーシャル・キャピタル論の考察(その一) - 社会学者の研究メモ
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    yuiseki 2009/01/21
  • 公共圏と親密圏(その1) - 社会学者の研究メモ

    The Purchase of Intimacy 作者: Viviana A. Zelizer出版社/メーカー: Princeton Univ Pr発売日: 2007/03/26メディア: ペーパーバック クリック: 1回この商品を含むブログ (2件) を見る 上記のは、アメリカでは有名ヴィヴィアナ・ゼリザー(Viviana Zelizer)の新しい。ゼリザー*1は「経済現象の社会学的説明」をしたいくつかの業績で知られている。田村祐一郎先生による邦訳もひとつある。 邦訳がないでよく読まれているものには以下のがある。 1987 Pricing the Priceless Child: The Changing of Social Value of Children 1994 The Social Meaning of Money いずれも丁寧な文献資料調査を通じた研究で、定評がある。

    公共圏と親密圏(その1) - 社会学者の研究メモ
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    yuiseki 2009/01/21
  • タミフル - 社会学者の研究メモ

    ■[日記・コラム] タミフル タミフル服用後の飛び降り・転落の報告は15件 厚労省 まさに問題はここ。 厚労省は、服用と異常行動の因果関係については否定的だ。同省の研究班(主任研究者、横田俊平・横浜市立大教授)は昨冬、患者約2800人を対象に調査を実施。患者の9割が服用していたが、異常行動の発生頻度は、飲んでいなかった患者が10・6%、服用者が11・9%で、統計学的な差はなかったことを根拠にしている。ただ、患者の8割が10歳未満だったこともあり、研究班はさらに1万人規模の調査を進めている。 調査に携わっているわけではないのではっきりしたことは何も言えないが、「インフルエンザ→異常行動」の関係を除去したうえで「タミフル→異常行動」の因果を特定しないと、なんとも判断しようがない。上記調査が適正で、そして異常行動のレベルがタミフル摂取の有無にかかわらず同じである場合、タミフルの禁止は必要ないし、

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    yuiseki 2007/03/22
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