『なぜ働いていると本が読めなくなるのか (集英社新書)』は、はてなブックマークが生み出した(!)作家・書評家の三宅香帆の近著で、同名のウェブ連載を書籍化したものです。本書は、労働と読書の関係を明治から平成にかけての歴史を通じて探り、最後に著者自身の社会への提言でまとめられています。 本書では、読書に関する「教養としての知識」と「情報としての知識」を区別しています。「教養」としての知識には偶然性や文脈(ノイズ)が含まれるのに対し、「情報」はそれらのノイズが除去され、読者が求めるものだけが提供されると説明しています。この情報に最適化された形式が現在の自己啓発書となっているのが本書の歴史考察で分かります。 高度経済成長期を経て形成された仕事=人生という人々の価値観は、自分から離れた知識=ノイズを取り入れる余裕、すなわち読書をする余裕を失わせる結果となりました。その結果、情報の消費は「仕事のため」