通りがかった公園で、梅の花が咲いているのを見つけた。 正直なところ、梅の花にはあまり馴染みがない。 僕らが長く住んでいた北海道では、梅は桜とだいたい同じかその少し後、5月の頭の連休に咲くものだった。その頃には大体みんな花見で浮かれていて、エゾヤマザクラの木の下で寒々しく焼肉やジンギスカンをしてみたりするけれど、梅は郊外の公園に出かけないと見られないし、意識の外だった。「梅は咲いたか桜はまだかいな」というフレーズに聞き覚えはあるけれど、ただ知っているだけだ。 まだ雪に埋もれた公園の枝につぼみが膨らみ、それが開いたところで、信じられない気持ちのまま妻にそれを教えた。 「梅、咲いてたよ」 「……ははは、ウソでしょ? だってまだ雪の中だよ」 妻は最初笑って信じようとしなかったけれど、教えた僕だってそうなのだ、無理もないと思った。出かけたついでに娘と妻を連れていくと、娘は「さくらだ! さくらだね!」
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