「絶望は死に至る病」と言った哲学者がいた。確かに何の望みもないという状況は大変である。心理療法をしていると,「この世に何の望みもない」という人が来られ,答えに窮するときがある。しかし,それにはよい答えがあることを先日発見した。 「のぞみはもうありません」と面と向かって言われ,私は絶句した。ところが,その人が言った。 「のぞみはありませんが,光はあります」 なんとすばらしい言葉だと私は感激した。このように言ってくださったのは,もちろん,新幹線の切符売場の駅員さんである。 「のぞみはなくとも,ひかりがある」 あまりにもいい言葉なので,私は思わず,言われたとおりのことを大声で繰り返して言ってしまった。 駅員さんは不思議そうな顔をしていたが,「あっ,『こだま』が帰ってきた」 と言った。ハイ,オシマイ。