新幹線に乗る際、私は崎陽軒のシウマイ弁当を食べることをささやかな楽しみとしていることもあり、発車までの間に買っておこうと、弁当屋に向かった。ところが、弁当屋のシャッターは降りたままだった。旅のはじまりから緊急事態宣言の洗礼を受け、ちょっとがっくりしながら、代わりに唐揚げ弁当を買って、新幹線に乗り込んだ。 私は、新大阪駅を経由して、和歌山県和歌山市にある天王新地という色街へと向かおうとしていた。 この状況下、わざわざ和歌山へ、しかもなぜ色街を訪ねるのか。新宿の歌舞伎町や札幌といった日本を代表する歓楽街は、このコロナ禍、幾度となくテレビや新聞、雑誌などで取り上げられてきた。特に歌舞伎町は夜の街の代名詞であり、クラスターの発生源となったこともあり、世間の注目を集めた。 一方で、世間でもほとんど知られていない色街の人々は、どのようにこの逆風を凌いでいるのか、それとも店を閉じてしまったのか。この目と