映画「おくりびと」(2008年)には、納棺師の職に就いた夫を、妻が「触らないで!」と拒絶するシーンがあった。死に対する穢(けが)れの意識は私たちの中に抜きがたく存在する。死が日常から切り離されるに従い、かつては身近な人が行っていた納棺は、それを職業とする人の手に委ねられるようになった。映画の成功で職業としての納棺師は広く知られるようになったが、納棺という行為そのものは人間の死=エンディングの一部に過ぎない。死者と生者、双方にとってより良い「お別れの場」を求めて「おくりびとアカデミー」を立ち上げた一人の若者の姿を追った。 (ノンフィクションライター・中原一歩/Yahoo!ニュース編集部)