浜田晶則/AHA 浜田晶則建築設計事務所・teamLab Architectsパートナー 今回はビデオゲームの話から始めようと思う。ハードウェアとソフトウェアの関係、ツールと空間認識の関係を考えるには好例であろう。研究者の松永伸司は著書『ビデオゲームの美学』でビデオゲーム作品を以下のように定義している。 ビデオゲーム作品とは、(1)視覚的デジタル媒体を通して実現される人工物であり、かつ、(2)娯楽的に、あるいは、芸術的に受容されることを意図された(あるいは慣習的にそのようなものとしてなされている)ものであり、かつ、(3)その受容のあり方が以下のいずれかのように意図された(あるいは慣習的にそのようなものとして見なされている)ものである。(3a)ゲームのプレイ、(3b)インタラクティブなフィクションの受容、(3c)シミュレーションの受容。ここでは(1)に着目して、ビデオゲームと建築におけるコン
『ビデオゲームの美学』を読んだ。『批評について: 芸術批評の哲学』、『芸術の言語』に続き、これで分析美学の本は3冊目。 本書が提案するのは、ゲームを(芸術として)批評するための枠組み。どんな本かは筆者がブログ記事『『ビデオゲームの美学』はこんな本』にしているのでスキップ。 すごくよかった。遊んだゲームについて考えるのに使いたいから、別にあんちょこが欲しい。目的、スコープ、テクニカルタームいずれも丁寧に記載されているおかげで難しい内容が書いてあるにも関わらず、飛躍が感じられないのだけれど。たまに差し込まれる筆者のゲーム愛も溢れた感じがして好きなのだけれど! というわけで本書とは別にそういうのがあったらいいなと思う次第。哲学に興味ないけれど、ビデオゲームについて真剣に考える人が読むには、本書はハードル高いだろうし(リライトされているとはいえもともと博士論文)。先行議論を読まなくても、流れを追え
この記事では書籍『ビデオゲームの美学』 についての私見を述べます。(2020.08.31) 初見の方はぜひ自己紹介とまえがきもご覧ください。 書籍紹介 松永伸司氏の『ビデオゲームの美学』を紹介する。もともとビデオゲームについて考えることが好きだったが、この本をきっかけに、より深い沼に入ることとなった。ずぶずぶである。 本書は分析美学(芸術の哲学)の視点から、ビデオゲームのならではの特徴を明らかにすることを通じて、ビデオゲームを理解するための道具立てを提案している。(分析美学についてはこちらを参照。)その内容は学術的な厳密さがあり、難解なので、本稿ではかなりざっくりとした概要と、本書の意義について私見を述べるにとどめる。より突っこんだ内容については、細かいトピックに分けて後日改めて書いてみたい。 概要までということもあり、本稿は、こうしたゲーム研究、とくに人文学的な領域に馴染みのない方にも読
ビデオゲームの殺人はメディアで問題として取り扱われることがありますが、ゲーム好きとしてこのテーマは長年の悩みであり、どう考えればよいのかまとめてみました。 ある日奥さんに「暴力的なゲームをプレイしても悪影響がないことは分かったけど*1,*2、暴力的な表現は良くないと思う」と言われたとき 「ゲームだから(もごもご…)」とまともに返答できませんでした。 僕自身、「人を銃で撃つゲームは好きじゃない」という思いは昔からあったので、この問題は対外的な意味だけでなく、自分自身のゲーム哲学に関わる重要な意味を持ちます。 結論としては、 『ゲームのプレイヤーが自身の価値観に注意して遊んでいる限り問題ない』 と主張して、その理由を説明していきたいと思います。 本記事では、殺人そのものの善悪を問う内容ではなく、ゲームのプレイヤーの視点で問題がどこで起こるのか、どう扱えば良いのかを考えたものであることをご了承下
第16回芸術評論募集 【佳作】大岩雄典「別の筆触としてのソフトウェア——絵画のうえで癒着/剥離する複数の意味論」『美術手帖』創刊70周年を記念して開催された「第16回芸術評論募集」。椹木野衣、清水穣、星野太の三氏による選考の結果、次席にウールズィー・ジェレミー、北澤周也、佳作に大岩雄典、沖啓介、はがみちこ、布施琳太郎が選出された(第一席は該当なし)。ここでは、佳作に選ばれた大岩雄典「別の筆触としてのソフトウェア——絵画のうえで癒着/剥離する複数の意味論」をお届けする。 山本直輝 実体のない風景としての人物 2018 山本直輝の〈歯〉 1982年生まれの画家・山本直輝の絵画《実体のない風景としての人物》(2018)[図1]は、山本の主な制作環境であるAdobe Illustrator特有の挙動を画面上に残している。中央下には左端が画面上で垂直に削られたテーブル、そのうえに、およそ人体のような
こんにちは、限界研の宮本道人です。 『プレイヤーはどこへ行くのか』、もう皆さまお手に取って頂けましたでしょうか? 僕は今回の論集では編著者として関わらせて頂いております。今は無事にぼちぼち感想を頂けるところまで辿り着けてほっとしているところです。 さて、今日のブログでは、『プレどこ』の拙論を自分で改めて読み直しての感想を書いてみようと思います。書き残した部分はあるか、今後の発展の可能性にはどういうものがあるかなど、つらつらと思いついたままに書いていきますので、『プレどこ』をまだ読んでいない方も既に読んだという方も、ぜひ読んで頂ければ幸いです。 「リアリティ・ミルフィーユに遍在するVTuberたち 複数キャラクター同時プレイ論」は、複数キャラクターを同時にプレイする遊び方についての論考です。 Vtuberとしてゲーム実況をする中の人は、VTuberのアバターを演じると同時に、ゲームのキャラク
Article Articles and monologues about topics of France and sometimes of others. 第3弾は2018年のベスト本です。FBN のライターの他に、『泥海』で小説家デビューされた文芸評論家の陣野俊史さん、今年話題になった『収容所のプルースト』を訳された岩津航(bird dog)さん、Small Circle of Friends のサツキさんにも参加していただきました。冬休みの読書の参考になれば幸いです。 陣野俊史 1. Jean Luc Raharimanana, Revenir, Rivages, 2018 まったく個人的な理由だが昨年の夏、マダガスカルに行った。以後、ほぼあの島に魅了されているといっていい生活を送っている。文学もそう。マダガスカルの詩人たちの詩集を集め、読み、あれこれ考える生活。そしてこの作家に
松永伸司『ビデオゲームの美学』のレビューです。 ブログのタイトル、「趣味がゲームと言える」 それがこの一冊で可能になるのではないでしょうか。そのぐらいの価値のある本です。 まず、「ビデオゲームの美学」 このタイトルにゲーム好きの心は鷲掴みにされました。 ブログを作ったタイミングでの発売ということもあり、買うしかありませんでした。 ところが、読んでみると本書はなかなか「上級者」向けの本でした。 まず本書が”どのような本”であるかをお伝えするために、著者の言葉を借りて紹介したいと思います。 ~ネタバレ注意~ 気になる項目へジャンプしながら読むことをオススメします! 本書の紹介紹介本書は、ビデオゲームを広義には美学の観点から、狭義には芸術の哲学の観点から扱う本です。 ビデオゲームはどのような独特の特徴を持った芸術形式なのかという問いに答えるため、ゲームならではの特徴(本書にて「ナラデハ特徴」と表
対戦型ゲーム競技「eスポーツ」が世界的に盛り上がりを見せ、市場拡大が進むゲーム産業。日本のゲームは世界的にも広く受け入れられており、近年は政府からもゲームの文化的重要性とその経済波及効果を認められている。 本書「ビデオゲームの美学」はビデオゲーム(視覚ディスプレイを用いるゲームの総称)を、絵画や映画などと並ぶひとつの芸術形式として捉え、ビデオゲーム"ならでは"の特徴を明らかにすることを試みた一冊。 芸術哲学の先行研究を踏まえつつ、スペースインベーダー、パックマン、スーパーマリオブラザーズ、テトリス、ドラゴンクエストなど多くの作品を事例として取り上げながらゲーム研究の理論的枠組みを提示する。 著者の松永伸司氏は本書の読みどころについて、「この本ではゲームを『行為のデザイン』として捉え、それをさらに『目的のデザイン』『信念のデザイン』『現実のデザイン』に分解して論じています。この見方は、人は何
【シリーズ:BOOK】 ビデオゲームを芸術哲学の観点から考察する『ビデオゲームの美学』『美術手帖』の「BOOK」コーナーでは、新着のアート&カルチャー本から注目の図録やエッセイ、写真集など、様々な書籍を紹介。2019年2月号の「BOOK」1冊目は、スペースインベーダー、ドンキーコング、テトリスといった数々の事例とともに、ビデオゲームをひとつの芸術形式としてとらえ、その諸特徴を明らかにする『ビデオゲームの美学』を取り上げる。 松下哲也(近現代美術史)=評 ビデオゲーム研究の最重要書 すでにゲームスタディーズが学問分野として確立しており、多くのビデオゲーム系ウェブメディアが広告媒体然とした役割から脱却した誠実な言論のプラットフォームになろうとしているいま、「ビデオゲームは芸術だ!」(本書帯より)という主張は自明であるように思われる。しかし、この自明の論理を論理にするためには、芸術哲学(分析美学
ゲームには1つの統語論と2つの意味論があるらしい.それについて軽く説明した後この本を読んだ感想を述べる. 統語論 統語論とは何か.プログラミングだったら,何が文(statement)かを定めるものが統語論(syntax)になる.Cでプログラムを書く時にどこにセミコロンをつけるべきか,どこにかっこをつけるべきかとかを示すのが統語論となる. ビデオゲームの場合,ディスプレイ上にかかれてある画像*1が,どこまでが一つのまとまりで,またそのまとまりが何を表すかを示すものとなる.ゲームにおけるディスプレイ上に表示される2次元データのtokenizerが統語論だということだろう. 統語論では,ディスプレイ上の要素の意味までは深く読まない*2.どのように表示されるかの問題を取り扱うことになる. 意味論 意味論とは何か.プログラミングだったら,ASTから機械語にプログラムを変換する過程が意味論になるだろう
ビデオゲームの美学 作者: 松永伸司出版社/メーカー: 慶應義塾大学出版会発売日: 2018/10/20メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る 美学研究者による分析美学的なビデオゲーム研究。博士論文をもとにした本格的な理論的研究の著作ゆえに読者への要求水準も低くはない1が,個人的にも親しみのある文化が精緻かつ明晰な理論によってエレガントに説明されていく様子は,ゲーム研究の門外漢にとっても読んでいてある種の知的な興奮を覚えるものであった。 全体的な流れとしては,ビデオゲームの記号システムを一つの統語論(画面と音声からなる「ディスプレイ」に示される要素)と二つの意味論(虚構世界/ゲームメカニクスを表す)という水準にわけることによって,それらの区別がない先行議論の混乱をすっきり整理していくという構図になっている。 この議論の運び方は,創出/中立/感受のレベルをわけることでその区
ビデオゲームは一体いかなるナラデハ特徴を持っているのかを、記号の意味作用という観点に着目して明らかにしようとする本 これは名著 様々な論点が丁寧に整理され、読者が気に掛かるであろう点にはきちんと補助線が引かれ、踏み込む必要のない議論では中立的な立場にとどまり、しかし、踏み込むべきところではきっちり踏み込んでいる。そんな感じ。 というか、内容以前に装丁がいい! 画像だとこの装丁の良さが全然伝わらないので、是非実物を手にとってもらいたい この装丁だけで手元におく価値があるレベル これは博士論文が元になった著作だが、筆者があとがきで自ら述べている通り、博論刊行後に筆者が手がけた2冊の訳書、イェスパー・ユール『ハーフ・リアル』とネルソン・グッドマン『芸術の言語』とをかけあわせたような本になっている。 ユールは、ゲームをフィクションとルールの二面性があるものとして特徴付けた。ルールは現実の側に属する
松永伸司氏は分析美学のアプローチを駆使して、ビデオゲーム研究をしている研究者。代表的な翻訳書にイェスパー・ユール『ハーフリアル――虚実のあいだのビデオゲーム』とネルソン・グッドマン『芸術の言語』がある。今回、発売される『ビデオゲームの美学』は、松永氏が2015に東京藝術大学に提出した博士論文「ビデオゲームにおける意味作用」をベースにしつつ、前述の『ハーフリアル』と『芸術の言語』を援用したものになっているという。 松永氏が扱う「分析美学」とはなにか。 主に英語圏で行われている哲学の美学であり、「分析」という言葉は哲学の一分野である「分析哲学」に由来している。これはフランスやドイツなどの思弁的に論理を積み重ねて、曖昧でときには空論だと批判された大陸系哲学と比較されるもので、より経験的で現実と理論とのフィードバックを重視した自然科学に近い手法で、明瞭に分析、検証する哲学を目指す。その手法を芸術や
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