秋が深まると、むかごを思い出す。 むかご - Wikipedia 「むかごが採れたよ」 竹編みの籠を抱えて、ばあさんが畑から戻ってくる。 むかごは、平たくいえば、いくつかの特定種の茎にできる小さい球根だ。俺(幼稚園生)はそのことがよくわからなくて、「むかごってなあに」って何度も訊いていた。 「へんなの」「でもおばあちゃんの作るむかごは、おいしい」 俺の科白のむかごのところには、トウモロコシでも栗でも里芋でもアスパラガスでも好きなだけ森羅万象をはめてくれ。感性やものごころというのは正直なもので、季節の風物詩、などというまえに、日ごろは忘れていたむかごさんのことを、11月にはちゃんと思い出す。 「赤ちゃんじゃがいも」 指さして、そんなふうに呼んでいたことも、いま思い出した。 ヤマイモのほかにオニユリ、ノビル、タマブキなど、むかごを形作る植物はある程度限られていて、もちろん、俺(幼稚園生)はそん