認知症の一つ「前頭側頭型(ぜんとうそくとうがた)認知症」が影響したとみられる万引事件が、兵庫をはじめ全国で相次いでいる。物忘れや徘徊(はいかい)が少ないため気付かれにくく、逮捕後に初めて判明するケースが目立つ。裁判では再犯でも実刑を回避する判決が出ているが、詳しい症状は法曹や捜査関係者にもあまり知られておらず、手探りの対応が続いている。(竹本拓也) 「母は残念ながら規範意識を失っている。24時間見守られるならいいが、不可能だ」 神戸市内に住む息子は打ち明ける。昨夏、80代の母親が同市のスーパーで食品を万引したとして、兵庫県警に窃盗容疑で現行犯逮捕された。 同認知症では、赤信号の無視など交通ルールを守らないほか、他人の花壇の花を抜く▽冠婚葬祭で暴れる-といった自分の思うままの行動をとることがある。母親は勾留中に女性警察官の指摘で、初めて専門医を受診。同認知症と診断され、不起訴となった。