タグ

ブックマーク / huyukiitoichi.hatenadiary.jp (8)

  • 〈水なし洪水〉が押し寄せた人類の終末を描く──『洪水の年』 - 基本読書

    洪水の年(上) 作者: マーガレット・アトウッド,佐藤アヤ子出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2018/09/22メディア: 単行この商品を含むブログを見る洪水の年(下) 作者: マーガレット・アトウッド,佐藤アヤ子出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2018/09/22メディア: 単行この商品を含むブログを見る『侍女の物語』のマーガレット・アトウッドの最新邦訳である。作品としては〈マッドアダムの物語〉三部作の『オリクスとクレイク』に続く第二部目だが、世界観と一部登場人物が共通しているが話としては独立しているのでここから読み始めてぜんぜんOK。〈水なし洪水〉と呼ばれる何らかの感染症によって人類の多くが亡くなってしまった後の世界をタフでハードに生き抜いていく、二人の女性の物語だ。 詩的でリズミカルな文体は驚異的に読みやすいうえに癖になり、二人の女性が、この滅亡一歩手前の世界がこの先

    〈水なし洪水〉が押し寄せた人類の終末を描く──『洪水の年』 - 基本読書
  • 『映画大好きポンポさん』の人の最新作(単行本化)──『猫村博士の宇宙旅行』 - 基本読書

    村博士の宇宙旅行 作者: 杉谷庄吾【人間プラモ】出版社/メーカー: 宙出版発売日: 2018/01/27メディア: コミックこの商品を含むブログを見る『映画大好きポンポさん』の人間プラモさんの最新作──というか同じくWebで発表した漫画に30ページ以上の加筆修正を加えた単行化である。超スゴーイ技術で宇宙船を作った男が色んな星をめぐり宇宙の果てを目指すスペース・オペラな旅を描く作は、一言でに表現すればコミカルなインターステラー。ノリは軽く、しかし描写はずっしりと、一冊の中で宇宙の果てまでをきっちりかっきり描ききってみせる。 huyukiitoichi.hatenadiary.jp 舞台となるのは2028年で、ちょうど10年後の未来。空間跳躍船ピカトリクス号は、”宇宙の真理”と”宇宙美女”を手に入れるため、天才科学者村博士とロボットのポピ子の二人を載せて地球を出発し、まずは月を目指す─

    『映画大好きポンポさん』の人の最新作(単行本化)──『猫村博士の宇宙旅行』 - 基本読書
  • SF短篇の醍醐味が詰まった小川一水最新短篇集──『アリスマ王の愛した魔物』 - 基本読書

    アリスマ王の愛した魔物 (ハヤカワ文庫JA) 作者: 小川一水出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/12/19メディア: 文庫この商品を含むブログ (1件) を見る小川一水さん久々の短篇集! 最近は《天冥の標》シリーズで超絶オモシロイ大長篇を書く化物という印象が強いかもしれないが短篇の名手でもある。短篇毎に文体がまるごとガラッと切り替わり、コンセプトは明瞭明快で、書だけでも数学童話から宇宙SF、生物SF、バイクSF(?)、ロボット/AISFにまで多彩な方面へと果敢に切り込んでみせる。一言でいえばSF短篇の醍醐味はここにあらかた詰まっているといいたくなる短篇集だ。 作品の発表年としては2010〜2012年の物が4篇と最近のものは収録されていないが、その代わりに書き下ろしの「リグ・ライト──機械が愛する権利について」で現代のAI関連の文脈をよく捉えた"傑作"が収録されており、全部短

    SF短篇の醍醐味が詰まった小川一水最新短篇集──『アリスマ王の愛した魔物』 - 基本読書
  • 人類の生存圏を脅かす"新しい時空との対決"を描くイーガン最新刊──『シルトの梯子』 - 基本読書

    シルトの梯子 (ハヤカワ文庫SF) 作者: グレッグイーガン,Greg Egan,山岸真出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/12/19メディア: 新書この商品を含むブログ (4件) を見るイーガンの新刊、文庫である。ただし原書の刊行は2002年。それはつまり15年間時をあけての邦訳刊行になるわけだ。無名の作家ならともかく、あのイーガンがここまで翻訳されていないということは、それはつまり単純につまらないからなのではないか?? と疑っていたのだけれども、読んでみたらこれが抜群におもしろい書の刊行は時期的にいえば『ディアスポラ』のあと、『白熱光』のまえといったタイミングで、イーガンが異なる物理法則に支配された新宇宙の創造、ハードな世界構築の方へと傾倒していく序章のような立ち位置につけている。データ化された人間たち、死の概念の変化とアイデンティティの同一性への不安、どこまでもハー

    人類の生存圏を脅かす"新しい時空との対決"を描くイーガン最新刊──『シルトの梯子』 - 基本読書
  • 凝集と拡散のせめぎ合い──『宇宙に「終わり」はあるのか 最新宇宙論が描く、誕生から「10の100乗年」後まで』 - 基本読書

    宇宙に「終わり」はあるのか 最新宇宙論が描く、誕生から「10の100乗年」後まで (ブルーバックス) 作者: 吉田伸夫出版社/メーカー: 講談社発売日: 2017/02/24メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る書名からもわかる通り、書は宇宙史を扱った一冊だ。これがびっくりするぐらいおもしろい/わかりやすい! 他の解説で、書かれている意味がよくわからずに何度も何度も辛抱強く読み返してようやく理解したようなことが、スッと理解できる形で、より短くまとめられていて、まずその端的なわかりやすさに感動してしまった。 書は深いテーマを掘り下げていく類のではないからこれ一冊で宇宙は全てOKというわけではないけれども、その代わりに俯瞰的に宇宙の歴史をまとめ、宇宙の始まりから終わりまでを適切に駆け抜けてみせる。「宇宙論のって出すぎていてどれを読んだらいいかわかんない」という人も多いだ

    凝集と拡散のせめぎ合い──『宇宙に「終わり」はあるのか 最新宇宙論が描く、誕生から「10の100乗年」後まで』 - 基本読書
  • 古典ディストピアSF三冊+SFマガジン最新号を紹介する - 基本読書

    最近『動物農場』、『すばらしい新世界』がそれぞれ山形浩生訳、大森望訳で新訳、『破壊された男』は伊藤典夫訳そのままに文庫化され、この機会に一気に読んだ。この三冊の刊行は虐殺器官の映画公開に合わせたディストピアSF企画の一環だが、どれも今読んでおもしろいし作風もそれぞれ異なるのでまとめて紹介してみよう。 動物農場 動物農場〔新訳版〕 (ハヤカワepi文庫) 作者: ジョージ・オーウェル,水戸部功,山形浩生出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/01/07メディア: 文庫この商品を含むブログ (1件) を見るオーウェルの代表作の一つ。この三冊の中では、訳者あとがきや序文を入れても200ページちょっとでページ数が一番短い。薄いが好きだからこれは嬉しい。 中身も可愛らしい(かどうかはともかくとして)動物たちが人間たちに対し蜂起し、すべての動物は平等であるという理想を実現した「動物農場」を設

    古典ディストピアSF三冊+SFマガジン最新号を紹介する - 基本読書
  • 人間と機械の境界を探る──『明日、機械がヒトになる ルポ最新科学』 - 基本読書

    明日、機械がヒトになる ルポ最新科学 (講談社現代新書) 作者: 海沢めろん出版社/メーカー: 講談社発売日: 2016/05/18メディア: 新書この商品を含むブログを見るSR(代替現実)、3Dプリンタ、アンドロイド、AI(人工知能)、ヒューマンビッグデータ、BMI、幸福学とテクノロジーに関連する諸分野の専門家へと小説家の海沢めろんさんが話を聞きに行ったインタビュー集である。 最先端の研究者はを書く暇なんてないので「忙しく研究している人へと話を聞きに行く」はありがたい。とはいえ2年前の取材も入っていてそれはもうルポ最新科学ではないのではと思いながら読んだら、確かに古いけれどもなかなか楽しませてもらった。わりと研究の筋には関係ないというか研究者の素の部分みたいなのが現れているのもおもしろい。石黒浩さんが『僕も、従来の物質的な幸せや金銭的な幸せを超えて、ある程度人が納得するような精

    人間と機械の境界を探る──『明日、機械がヒトになる ルポ最新科学』 - 基本読書
  • 「新しい」視点での生命史──『生物はなぜ誕生したのか: 生命の起源と進化の最新科学』 - 基本読書

    生物はなぜ誕生したのか: 生命の起源と進化の最新科学 作者: ピーターウォード,ジョゼフカーシュヴィンク,Peter Ward,Joseph Kirschvink,梶山あゆみ出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2016/01/14メディア: 単行この商品を含むブログ (2件) を見るこれはおもしろい! 邦題だと「生物誕生の謎を解き明かす」一冊に思えるかもしれないが、原題は『A NEW HISTORY OF LIFE』で新しい観点からの生命史を語り起こすことをメインコンセプトと作品だ。生命史はこれまで良書が幾つも書かれてきたし、いまさら「新しい」も何もあるんだろうか? と思うかもしれないが、実験手法も変化したし、計器が進歩して新たな事実が明らかになった部分もある。 たとえば、地球の原初の状況など幅広く分析する地球物理学のような研究分野は20世紀後半に大きく発展したものだ。そうした純粋

    「新しい」視点での生命史──『生物はなぜ誕生したのか: 生命の起源と進化の最新科学』 - 基本読書
  • 1