あまりに突然だった。さっきまで文書をプリントアウトするなど快調に動いていたパソコンが、固まっていた。再起動をかけようにも、「OSが見つかりません」の表示で止まってしまう。過去2台のパソコンが壊れた経験からデータは救えると思い、社内のサポート部署に持ち込んだ。ごちょごちょとやってくれたあげ句、「無理です。ハードディスクに問題があります」と、にべもない。目の前が暗くなった。 パソコンの中には出稿日が迫る完成済みの原稿数本と写真が入っていた。「バックアップをとってないんですか」のあきれた問いかけが頭の向こうでむなしく響く。バックアップはせいぜい年に1度だ。同僚の「どうして壊れたんですか。落としたんですか」の追及に、そんな覚えはないが、原因など、この際どうでもいい。過去約1年の写真やさまざまな作成データが失われたショックで、ため息しか出ない。パソコンは信頼できない。と思うのは何度目か。【金沢衛】