皇居横にある「戦争博物館」が担う役割 日本では公的な歴史博物館が全体像を示すことを避けがちなため、民間の歴史博物館がそれに代わってはっきりとした歴史観を提示することが多い。その代表的な例が、靖国神社に併設された遊就館である。 遊就館は、1882(明治15)年、靖国神社の境内に武器陳列所として設立された。名前は、『荀子』勧学篇の一節「故に君子は居るに必ず郷を択えらび、遊ぶに必ず士に就く」から取られた。戦前、靖国神社は陸軍省が建設や経理を担当していたため、遊就館も陸軍省が管理する国立の軍事博物館という性格を持っていた。 日清戦争や日露戦争などを経ることで展示も充実したものの、1923(大正12)年の関東大震災により、設立当時の建物(イタリア人カペレッティによるイタリア古城様式)が損壊。1931(昭和6)年10月、伊東忠太設計により東洋風に建て直された。これが現在の本館にあたる。 敗戦後、靖国神
