日本に限らないが、MMTはリーマンショック後の経済政策論争の中で知られるようになっていった。そのため、 好意的な側からも、批判的な側からも、 実際の内容については紹介されることはなく、ただ「国債残高がいくら多くなっても構わないと主張している エキセントリックなグループ」程度の理解しか進まなかった。実際には貨幣史、経済史、社会哲学、社会学等々にまたがる 広範な背景を持った理論なのだが、少なくとも日本では、そうした側面についてはまったく知られていないように思う。 本書は、MMTの思想的起源の一つともいえるMitchell=Innes の、1913年に発表された貨幣に関する2本の論文と、 現代のMMTの指導者層による貨幣の起源・発展史に関する論文を集めたものである。Innes の論文は発表当時、 かなりの論争を引き起こした。たとえばケインズも『貨幣論』の中ではその名を引用している。しかしその後、