1.世界金融危機の本質 2007年半ばに生じた米国サブプライム・ローン危機は、2008年9月のリーマン・ブラザーズ証券の破綻、10月の世界同時株安を経て、世界金融危機へと深刻化した。 危機前の世界経済は、大安定(Great Moderation)とも呼ばれる、長期金利・物価の低位安定と新興国に代表される力強い経済成長を謳歌していた。ちなみに我が国が「失われた10年」とも呼ばれる長期の停滞から一息つくことが可能になったのも世界経済の好況という外部環境の影響が大きい。 長期金利の低位安定は資産価格の上昇を生み、物価の低位安定は投資や消費を促進する。そして皮肉なことに、金融危機の原因でもある「住宅バブル」は、ITバブル崩壊やアジア金融危機といった危機への対処策としてなされた金融緩和策、住宅購入促進策、金融資本市場の自由化・技術革新といった要因に加えて、新興国の持つ潜在的な成長力への期待とい