言論の自由が抑圧される権威主義的体制の下で、民間企業がイノベーションを活発化させ、その果実を体制が自らの維持に活用する——。現代中国の政治と経済の関係は、これまでの常識とは違うパターンで回り始めている 中国の「新常態」とイノベーションGDP世界第2位の経済大国となった中国経済は、現在大きな曲がり角にさしかかっている。中国政府は2014年に中国経済が「新常態」と表現される安定的成長段階に入ったとし、市場メカニズムを重視した改革の継続や、投資に依存した粗放的な成長路線からの転換を目指す方針を明らかにした。 成長パターンの展開で重視されるのがイノベーションの活性化である。中国政府は、経済成長の新たな原動力を求めて15年より「大衆創業、万衆創新(大衆による起業、イノベーション)」という政策を打ち出し、中央だけでなく地方政府のレベルでも創業やイノベーションを奨励している。また同年には国務院通達の形で