「えっ!? あそこに居るの、金メダルの上野さんじゃないですか?」 いまやホークス先発陣の立派な柱に成長し、個人タイトル獲得も見えてきた千賀滉大。'12年1月。当時まだ18歳だった右腕が見せた、あの驚いた顔は、いまだに忘れられない。今となってはイイ笑い話である。 千賀はプロ1年目のオフから毎年1月は福岡県八女市へ足を運び、多数のプロ野球選手が愛用する「コウノエベルト」の考案者でもある鴻江寿治トレーナーの主宰する自主トレに参加している。これは、そこに初めて訪れた時の話だ。 トレーニング場の玄関の扉を開けると“先客”たちの声が二階から響いていた。階段に足をかけるが、なんだか足どりが重そうだ。緊張していた。筆者は後から続いて上がったが、あの頃はまだ細かった背中からも分かりやすく伝わってきた。 「今日から、あの吉見さんと一緒に練習が出来る」 そのことで頭がいっぱいだったのだろう。吉見さんとは、ドラゴ