史上最悪の放射性物質漏れを起こした1986年のチェルノブイリ原発事故で、国土が汚染されたウクライナ。高濃度汚染地の北部ナロジチでは地域再生を目指し、ナタネの栽培で土壌を浄化する試みが日本の民間団体の主導で4年前に始まった。成長過程で放射性物質を吸着する性質があるためだが、事故から20年以上が過ぎて放射性物質が土壌と結合、地中深くにも浸透して吸着を困難にしていた。土壌汚染が深刻化している東京電力福島第1原発の周辺地域では、耕作地を放置せず、早期の対策が求められる。【ナロジチで田中洋之】 ◆農業に打撃 ウクライナの首都キエフから車で約3時間。北部ジトーミル州のナロジチ地区に入ると、廃屋と荒れ果てた農地が目立つ。中心部につながる道路沿いも人影はまばらだ。 ナロジチはチェルノブイリ原発の西約70キロに位置する。原発から半径30キロに設定されている居住禁止区域からは外れているが、放射性物質による汚染